費用ページに金額を載せるべきか。士業事務所のサイトを作り直すとき、ここで必ず手が止まる。載せれば安いところと並べられ、載せなければ「料金が分からない事務所」として候補から外れる。どちらを選んでも損をする気がして、結局「事案により異なりますので、まずはご相談ください」と書いて終わる。

この行き詰まりは、費用ページに書けるものが金額しかないと考えているところから生まれている。相談者が費用ページで探しているのは金額そのものではなく、自分の場合にいくらになるのかという決まり方である。

スリーハンドレッドは、受注から逆算してサイトの導線を設計している。この記事では、報酬の決まり方を相談前に示すための項目と手順を整理する。弁護士の各規程は条文が公開されているため例として引くが、所属会や業種によって定めは異なる。実際に書く前に、自分が所属する会の会則と指針を確認する必要がある。ここで述べるのは導線設計の考え方であり、法的助言ではない。

この記事の要点

  • 費用ページの論点は「金額を載せるか載せないか」ではない。書くべきは報酬の決まり方である。
  • 決まり方の項目はすでに形が決まっている。報酬の種類・金額または算定方法・支払時期・費用の範囲の4つで、いずれも受任時には必ず説明している内容である。
  • 「事案により異なります」で止まるのは事案が特殊だからではなく、金額を動かしている変数を書き出していないからである。

費用ページの問題は、金額を載せるか載せないかではない

2つの選択肢しかないように見えるのは、費用ページに書けるものが金額しかないと考えているからである。載せるか載せないかの二択は、金額しか書けないという思い込みから生まれている。

「安値で比較される」と「問い合わせが来ない」は、同じ誤解の裏表である

金額を載せると安値で比較されるという心配は、比較の軸が金額しかないときには当たっている。だが軸が増えれば話は変わる。何が含まれるのか、どういう場合に増えるのか、いつ払うのか。判断材料が増えるほど、金額だけで並べることは難しくなる。

一方、金額を載せないことは判断材料をゼロにする選択である。相談者は比較をやめるのではなく、材料のある事務所へ移る。見えない中身を扱う商材で共通して起きることが、費用でも起きている。

相談者が知りたいのは、相場ではなく自分の場合である

「弁護士 費用」「顧問料 相場」で検索する人が探しているのは、世の中の平均額ではない。自分の抱えている事情で、いくらくらいになるのかである。平均額を知っても、自分の案件が平均なのかどうかが分からなければ判断に使えない。

業務によっては、統計が公表されているものもある。行政書士の報酬額統計調査は、行政書士法第10条の2第2項に基づいて日本行政書士会連合会が実施し、「依頼者の選択及び行政書士の業務の利便に資するため」として結果が公表されている。ただしこうした統計も、自分の案件がどこに当たるかを示してはくれない。そこを埋めるのが、各事務所の費用ページである。

受任時に必ず説明している4項目が、相談前には出ていない

相談者が知りたい「決まり方」は、実はすでに形が決まっている。受任の際に必ず説明している項目は、そのまま相談前にも書ける項目である。

費用ページで起きているすれ違い 事務所は金額を出すかで迷い、相談者は決まり方を知りたがっている 事務所側|載せるかで迷う 金額を出すと 安値で比較される 事案ごとに違うので 一つの金額を書けない 規程に触れないか 判断がつかない 相談者側|決まり方を知りたい 自分の場合は 何で金額が決まるのか 報酬のほかに 何がいくらかかるのか いつ払うのか 途中でやめたらどうなるか 書かれているのは「事案により異なります」 相談される前に候補から外れる 金額だけを尋ねる連絡が増える
図1|事務所は金額を載せるかで迷い、相談者は金額の決まり方を知りたがっている。

報酬の規程は、示すべき項目をすでに決めている

弁護士の報酬に関する規程(2004年4月1日施行)の第三条は、弁護士等が報酬に関する基準を作成し、事務所に備え置かなければならないと定めている。その基準には「報酬の種類、金額、算定方法、支払時期その他弁護士等の報酬を算定するために必要な事項」を明示することとされている。

同じ規程の第五条は、法律事務を受任する際に報酬及びその他の費用について説明しなければならないこと、受任したときは報酬に関する事項を含む委任契約書を作成しなければならないことを定めている。契約書に記載する事項も「報酬の種類、金額、算定方法及び支払時期」である。

弁護士職務基本規程でも、第29条が受任にあたって「事件の見通し、処理の方法並びに弁護士報酬及び費用について、適切な説明」を求め、第30条が報酬に関する事項を含む委任契約書の作成を求めている。つまり、この内容は依頼を受けた時点で必ず伝えているものである。

4項目|種類・金額または算定方法・支払時期・費用の範囲

規程が挙げる項目を、費用ページの見出しに置き換えると次のようになる。相談前に書けるかどうかを、項目ごとに分けて考える。

項目相談者が読み取ること相談前に書けるか
報酬の種類どの場面で、何という名目の費用が発生するのか書ける。事案によらず、扱う業務の型で決まる
金額または算定方法自分の場合にいくらになるのか、何で増減するのか金額が一つに決まらなくても、幅か算定方法は書ける
支払時期いつ、どのタイミングで用意する必要があるのか書ける。着手時か終了時かは事案によらない
費用の範囲報酬のほかに何がかかるのか、何が含まれないのか書ける。実費や税の扱いは共通して説明できる

4項目のうち、事案によって決まらないのは「金額」だけである。残りの3項目は、事案の中身を聞かなくても書ける。

相談前に出せない項目は、出せない理由のほうを書く

金額が一つに決まらない業務は確かにある。その場合に「事案により異なります」で終えるか、「何が決まれば金額が決まるのか」まで書くかで、読み手に残るものは大きく変わる。後者は約束ではないため、書いても実際の金額を縛らない。

原因1|「事案によります」で止まり、算定方法が書かれていない

費用ページが止まる最初の場所は、金額を一つに決められないという壁である。金額が決まらないのは事案が特殊だからではなく、金額を動かしている変数を書き出していないからである。

「事案による」の中身は、数えられる要素に置き換えられる

弁護士職務基本規程の第24条は、報酬について「経済的利益、事案の難易、時間及び労力その他の事情に照らして、適正かつ妥当な」ものを提示すべきとしている。ここに挙がっている要素は、そのまま金額を動かす変数である。

実務で使っている変数は、もっと具体的なはずである。請求額、相手方の数、対象となる期間、交渉や出廷の回数、作成する書類の通数、申請先の数。これらは相談者にも数えられる。

変数を書けば、金額を書かなくても計算の形は示せる

「相手方が増えると費用も増える」と一行書くだけで、相談者は自分の案件の位置を推定できる。金額の幅を示せるなら、下限と上限、そしてどういう場合に上限側になるのかを添える。

この書き方は、値引きの約束でも安売りでもない。判断材料を増やす行為である。相談前の空白を埋める考え方を、費用という一点に絞って適用したものにあたる。

原因2|報酬と実費・税が混ざり、総額が想像できない

2つめの原因は、金額を書いている事務所にも起きる。書いてある金額と、最後に請求される金額が違うことである。

不安の対象は報酬額ではなく、最後に請求される総額である

相談者が身構えているのは、提示された金額そのものではない。「これ以外にもかかるのではないか」という部分である。印紙代、登記費用、郵券、交通費、他の士業への費用、そして税。これらが報酬と並んで書かれていないと、示された金額は目安としてすら受け取られない。

相談者が不安なのは報酬額ではなく、最後に請求される総額である。だから報酬の隣に「これに加えてかかるもの」を並べるだけで、同じ金額でも受け取られ方が変わる。

範囲外を書くことは、値引きではなく境界の明示である

含まれないものを書くと選ばれにくくなる、という心配は逆である。境界が書かれていない見積りは、相談者にとって上限のない見積りと同じである。上限が見えないものは、検討の土俵に乗せにくい。

範囲外を先に書いておけば、受任後の追加請求も説明しやすくなる。書いていない状態で追加が発生すると、金額の妥当性ではなく説明の有無が問題になる。

原因3|規程を気にして、書ける範囲まで書いていない

3つめは、規制への不安から筆が止まる場合である。規程が禁じているのは事実に合わない表示であり、費用を書くことそのものではない。

業務広告の規程が挙げているのは、事実に合わない表示である

弁護士等の業務広告に関する規程の第三条は、禁止される広告を列挙している。事実に合致していない広告、誤導又は誤認のおそれのある広告、誇大又は過度な期待を抱かせる広告、困惑させ又は過度な不安をあおる広告、特定の弁護士等との比較広告、法令違反の広告、弁護士等の品位又は信用を損なうおそれのある広告である。

並べて読むと分かるのは、対象になっているのが表示の中身の正確さと節度であり、費用を書くこと自体ではないという点である。条件を省いて安く見せる書き方が問題になるのであって、条件を添えて正確に書くことは想定されている。

通信手段だけで受任する場合は、報酬の表示がむしろ求められている

同じ規程の第九条の二は、通信手段による受任の場合について、広告の際に「報酬の種類、金額、算定方法及び支払時期」を表示することを求めている。サイトだけで完結する受任を想定するなら、費用の表示は避けるものではなく備えるものになる。

一般消費者向けの表示には、景品表示法も重なる

個人を相手にする業務では、景品表示法も重なって効いてくる。同法第5条第2号の有利誤認表示は、「実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認されるもの」などを指し、対象は一般消費者に対する表示である。

ここでも問われるのは、書いたか書かないかではなく、条件を省いて有利に見せたかどうかである。総額が別にかかるのに一部だけを大きく見せる書き方は、規程の側から見ても景品表示法の側から見ても危うい。逆に、条件と範囲を添えた記述はどちらの観点でも説明しやすい。

報酬の決まり方を書く、費用ページの4ステップ

ここまでを、手を動かす順番に置き換える。費用ページは、分解し、変数を特定し、示し方を選び、境界を書くという順に作る。

報酬の決まり方を書く、費用ページの四ステップ 業務を分解し、金額を動かす変数を特定し、示し方を選び、含む範囲と支払時期で締める 1 分解:業務を、報酬の種類ごとに分ける 相談料、着手金、報酬金、手数料、顧問料、日当。一つの料金表に 混ぜず、依頼者が受け取る場面ごとに分けて並べる。 2 変数の特定:金額を動かしている要素を書き出す 請求額、相手の数、期間、出廷や交渉の回数、書類の通数。 「事案による」の中身を、数えられる要素に置き換える。 3 提示:金額・幅・算定方法のいずれかを選ぶ 一つに決まるなら金額、範囲があるなら下限と上限、変数で決まるなら 計算式。どれも書けない業務は、決まる時期と決め方を書く。 4 境界:含むもの・含まないもの・支払時期を添える 実費、税、他士業への費用、中途終了時の扱い。含まれないものを 先に書くことが、相談者にとっては総額の手がかりになる。
図2|費用ページは、分解・変数の特定・提示・境界の明示の順に作る。

STEP1|分解:業務を、報酬の種類ごとに分ける

相談料、着手金、報酬金、手数料、顧問料、日当。名目が違えば発生する場面も違う。一つの料金表に混ぜず、依頼者が支払いに向き合う場面ごとに分けて並べる。自分の事務所で実際に使っている名目だけを使う。

STEP2|変数の特定:金額を動かしている要素を書き出す

過去の受任から、金額に差がついた理由を挙げていく。請求額、相手方の数、期間、回数、通数。自社の強みを掘り下げる作業と同じで、普段は言葉にしていないものを外に出す工程である。

STEP3|提示:金額・幅・算定方法のいずれかを選ぶ

一つに決まる業務は金額を書く。幅がある業務は下限と上限、上限側になる条件を書く。変数で決まる業務は計算の形を書く。どれも書けない業務は、いつ、何が分かった時点で金額が決まるのかを書く。空欄にはしない。

STEP4|境界:含むもの・含まないもの・支払時期を添える

実費、税、他士業への費用、中途で終了した場合の扱い、分割の可否。含まれないものを先に書くことが、相談者にとっては総額の手がかりになる。ここまで書いて、はじめて受注からの距離が近いキーワードで入ってきた人の疑問に答えられる。

事例で見る|“事案により異なります”を、決まり方の記述に変える

次は説明のための仮設例であり、実在の事務所や実績ではない。成果の数値は示さず、書き換えの方向だけを示す。

状況相続と遺言を中心に扱う事務所。費用ページには業務名の一覧と「事案により異なりますので、まずはご相談ください」の一文のみ。問い合わせは「いくらくらいですか」という電話に偏り、初回の電話で金額の話だけをして終わることが多かった。
原因報酬の種類が分かれておらず、金額を動かす変数も書かれていない。実費と税の扱いも書かれていないため、金額の手がかりが一つも残らない構成になっていた。
打ち手業務を報酬の種類ごとに分け、それぞれに「金額が決まる要素」を一行添えた。金額は、決まるものは金額、幅があるものは下限と上限と上限側になる条件、決まらないものは決まる時期を書いた。実費・税・他士業への費用は別の枠にまとめ、中途終了時の扱いも記載した。表示の範囲は所属会の会則と指針に照らして確認した。
設計上の想定金額だけを尋ねる電話が減り、相談の場では事情の確認から始められるようになる。費用の説明にかけていた時間が、受任の判断に使えるようになる。

ここで足した情報は、受任時には毎回説明していた内容である。金額を出さなくても、決まり方を書けば相談前の不安は減らせる。

スリーハンドレッドは、書ける範囲を確かめてから費用ページを設計する

費用ページは、文章の巧拙より先に、どこまで書いてよいかの線引きで止まる。私たちは書ける範囲を規程に照らして確かめてから、費用ページの構成を決める。最終的な適否の判断は、所属会への確認を前提とする。

いまの費用ページに4項目のうち何が欠けているかは、外から読めば判別できる。現状の確認は無料診断で受け付けている。問い合わせが受注につながらない原因と合わせて見ると、費用の説明がどの段階で効いているかが分かりやすい。

まとめ|費用ページが答えるべきは金額ではなく、金額の決まり方である

費用ページで迷う「載せるか載せないか」は、書けるものが金額しかないと考えたときにだけ生じる二択である。実際には、報酬の種類、金額または算定方法、支払時期、費用の範囲という4項目があり、事案によって決まらないのは金額だけである。

残りの3項目は、相談を受ける前から書ける。そしてその内容は、受任時には必ず説明しているものである。費用ページが答えるべきは金額ではなく、金額の決まり方である。

よくある質問

Q. 金額の幅を書くと、下限だけを見られて後で揉めないか

下限だけを書くと起きやすい。下限と上限を並べ、上限側になる条件を同じ場所に書けば、読み手は自分がどちらに寄るかを自分で判断する。揉める原因は幅を示したことではなく、上限側になる条件を書いていないことにある。

Q. 他の事務所より高い場合、費用を書くと不利にならないか

金額だけを並べれば不利になる。ただし比較の軸が金額しかない状態を作っているのは、判断材料を出していない側である。何が含まれるのか、どこまで対応するのかを書けば、比べられる項目が増える。高い理由を説明できないまま金額を隠すことは、その説明を先送りしているにすぎない。

Q. 弁護士以外の士業でも、同じように考えてよいか

項目の考え方は共通して使える。ただし報酬の説明や広告についての定めは、士業ごと、所属会ごとに異なる。この記事で引いたのは条文が公開されている弁護士の規程であり、他の士業にそのまま当てはまるものではない。自分の所属会の会則と指針を確認したうえで、書ける範囲を決める必要がある。

Q. 費用ページと料金表は、分けるべきか

分けないほうがよい。料金表だけのページは金額の比較に使われ、説明だけのページは読み飛ばされる。同じページの中で、種類ごとの金額または算定方法のすぐ隣に、決まる要素と範囲を置く。相談者は金額と条件を行き来しながら読むためである。

出典:日本弁護士連合会「弁護士の報酬に関する規程」/日本弁護士連合会「弁護士職務基本規程」/日本弁護士連合会「弁護士等の業務広告に関する規程」/消費者庁「有利誤認とは」/日本行政書士会連合会「報酬額の統計」