キーワード選定と聞いて、多くの担当者がまず開くのは検索ボリュームの一覧である。月間の検索回数が多い順に並べ、上から書けそうなものを選ぶ。手順としては自然だが、この順番で選んだ記事は、読まれても問い合わせにつながらないことが多い。

理由は単純である。検索回数は「何人が検索したか」しか表しておらず、「その人が発注に近いかどうか」は表していない。キーワードの優先順位は、検索ボリュームではなく、その語を打った人が受注までどれだけ近いかで決まる。この距離を無視したまま母数だけを追うと、読者は増え、商談は増えないという状態になる。

スリーハンドレッドは、BtoBの受託型企業のWeb集客を、受注から逆算して設計している。本記事では、キーワードを受注からの距離で4段階に並べ、どこから書くかを決めるまでの手順を、そのまま自社で再現できる形で示す。

この記事の要点

  • 検索ボリュームは母数の指標であり、受注の指標ではない。ツールが示す数値は、そのキーワードと類似パターンをまとめた平均値である。
  • キーワードは「受注からの距離」で4段階に分かれる。先に書くべきなのは、課題を自覚した段階と、依頼先を比べ始めた段階である。
  • 優先順位は3つの問いで決める。答えを持っているか、検索結果に入り込む余地があるか、無料診断まで導線が引けるか。通らない語は書かずに残す。

検索ボリュームで選ぶと、なぜ受注につながらないのか

検索ボリュームは、キーワード選定で最も手に入りやすい数値である。手に入りやすいがゆえに、判断の軸がそこに固定されやすい。母数の大きさと、発注確率の高さは、まったく別の指標である。

ボリュームが大きい語ほど、買う予定のない人が混ざる

検索回数が多い語は、それだけ多様な人が打っている。「Webマーケティング とは」を検索するのは、外注先を探している経営者だけではない。就職活動中の学生、レポートを書く大学生、業務を覚えたばかりの新人担当者、競合他社の社員も同じ語を打つ。

この語で上位を取れば、アクセスは確実に増える。しかし増えたアクセスの大半は、そもそも何かを発注する立場にない人である。記事を読んで満足し、そのまま離脱する。数字の上では成功しているのに、商談化率だけが下がっていく。

ツールの数値は「類似パターンの平均」であり、自社の見込み客の数ではない

Google広告のキーワードプランナーが示す月間平均検索ボリュームは、指定した期間と地域で、そのキーワードとその類似パターンが検索された平均回数である。既定では過去12か月の平均が表示される。

この定義には、見落とされやすい点が3つある。

  • 類似パターンを含む。表示されている数値は、その語だけの検索回数ではない。表記のゆれや近い意味の語がまとめられている場合がある。
  • 平均である。既定は過去12か月の平均であり、季節やイベントで大きく動く語ほど、平均値は実態から離れる。
  • 概数である。Google広告ヘルプは、検索ボリュームのデータが概数であり、対象地域が狭い場合は基となるデータが少なく精度が下がると明記している。

ツールの数値は、広告の出稿量を見積もるための概算であって、受注を予測するための数値ではない。桁の感覚をつかむには十分だが、優先順位そのものを決める根拠には弱い。

母数を追うと、自社が勝てない語だけが残る

検索ボリュームの大きい語は、当然ながら競合も狙っている。大手の比較サイト、資金を投じたメディア、長年の被リンクを持つ老舗サイトが並ぶ検索結果に、後から参入して上位を取るのは容易ではない。

結果として、上から順に取り組むほど、労力が大きく成果が出にくい語ばかりが手元に残る。母数を基準にするかぎり、この順番は変わらない。基準そのものを入れ替える必要がある。

検索意図は、Google自身が分類して評価している

検索意図という言葉は曖昧に使われがちだが、Googleは自社の検索品質を評価する基準の中で、これを明確に分類している。

ガイドラインが定めるクエリの分類

Googleが公開している検索品質評価ガイドライン(General Guidelines、2025年9月11日版)は、第12.7節で、ユーザーの意図によるクエリの分類を定義している。

  • Know/Know Simple。事実や答えを知りたい検索。Know Simpleは、短い答えで完結するもの。
  • Do。何らかの行動を完了させたい検索。
  • Website。特定のサイトやページにたどり着きたい検索。
  • Visit-in-Person。実際に訪れる場所を探す検索。
  • 複数の意図を持つクエリ。1つの検索語が、複数の意図を同時に満たしうる場合。

この分類は、評価者が「検索結果がユーザーの求めに応えているか」を判断するための枠組みである。自社の記事が誰に向いているかを点検するときにも、そのまま使える。

BtoBの受注に効くのは、Knowの奥とDoの手前

BtoBの受託サービスでは、検索からその場で購入が完結することはない。発注は、問い合わせ、商談、見積もり、稟議を経て決まる。つまり純粋なDoの検索は、ほとんど存在しない。

狙うべきは、Knowの中でも「自社の状況を踏まえて判断したい」という、答えが一言で済まない領域である。言葉の意味を知りたいだけの検索と、判断材料を探している検索は、同じKnowでも受注からの距離がまったく違う。この違いを段階として扱う。

キーワードを「受注からの距離」で4段階に並べる

ここからが本題である。自社で扱うキーワードを、検索した人が受注までどれだけ近いかで4段階に分け、必ずどこかに置く。下図は、その4段階と検索ボリュームの関係を示したものである。

なお、この4段階はスリーハンドレッドが実務の整理として用いているものであり、学術的なモデルでも、Googleが定める分類でもない。前節のクエリ分類が「検索結果が意図に応えているか」を見るための枠組みであるのに対し、こちらは自社が「どの語から書くか」を決めるための枠組みである。

受注からの距離で並べた4段階 帯の幅は検索ボリュームの相対的な目安。下にいくほど、検索した人は受注に近い 受注までの距離 第1段階 情報収集 「Webマーケティング とは」 遠い 第2段階 課題認識 「問い合わせ 受注につながらない」 やや遠い 第3段階 比較検討 「Web集客 外注 選び方」 近い 第4段階 指名・行動 「成果報酬 集客 依頼」 最も近い 先に書くのは、第2段階と第3段階
図1|キーワードは検索ボリュームではなく、受注からの距離で並べる。

第1段階|情報収集:言葉の意味を知りたい検索

「Webマーケティング とは」「SEO 意味」のように、言葉そのものを知ろうとしている段階である。検索する人は多く、ボリュームは最も大きい。

この段階の読者は、まだ課題を自覚していない。発注の検討はおろか、自社に問題があるとも思っていない。記事を読んでも、その先の行動に移る理由がない。後回しにしてよい段階である。

第2段階|課題認識:うまくいかない理由を探している検索

「問い合わせ 受注につながらない」「サイト 問い合わせ 来ない」のように、起きている問題を言葉にして原因を探している段階である。すでに自社に課題があることを自覚している。

この段階の読者は、答えを見つけた相手をそのまま相談先の候補として記憶する。原因を正確に言い当てられた読者は、その説明をした相手を信頼する。ボリュームは第1段階より小さいが、商談につながる確率は明らかに高い。

第3段階|比較検討:依頼先を絞り込むための検索

「Web集客 外注 選び方」「Webマーケティング 会社 比較」「Webマーケティング 費用 相場」のように、外部に頼むことを前提に、依頼先や条件を比べている段階である。

この段階の読者は、発注の意思を持っている。判断の軸を提示できれば、その軸のまま自社が候補に入る。書き手にとって最も投資対効果が高い段階であり、優先して取り組む価値がある。

第4段階|指名・行動:発注を前提にした検索

「成果報酬 集客 依頼」「Webマーケティング 会社 ○○市」のように、条件や地域を絞り込み、発注先を探している段階である。受注までの距離は最も近い。

ただし検索する人はごく少なく、指名で検索される段階に至るには、その前の段階で認知されている必要がある。第4段階だけを狙う設計は成立しない。第2段階と第3段階で存在を知られて初めて、この段階の検索が発生する。

優先順位は、3つの問いで決める

4段階に振り分けても、第2段階と第3段階の候補は数十語になる。そのすべてを書く時間はないため、次の3つの問いで絞り込む。

問い1|その語で来た人に、自社は答えを持っているか

検索した人が抱えている問題に対して、自社が実務として答えを持っているかを確認する。一般論なら書けるが具体的な打ち手は示せない、という語は候補から外す。

調べながら書いた記事は、調べれば分かる内容にしかならない。同じ内容は競合も書けるため、読者にとって自社を選ぶ理由にならない。実際に相談を受けたことがある問題かどうかが、判断の分かれ目になる。

問い2|その検索結果に、自社が入り込む余地はあるか

その語で実際に検索し、上位に並んでいるページを見る。大手メディアと比較サイトだけで埋まっている語は、後発が上位を取るのに時間がかかる。

一方で、内容の薄い記事や、読者の状況に踏み込んでいない記事が並んでいる語は、参入の余地がある。ツールの数値ではなく、実際の検索結果の質を見て判断する。

問い3|その語から、無料診断までの導線が引けるか

記事を読み終えた読者に、次の行動を提示できるかを確認する。スリーハンドレッドの場合は、60分の無料診断が唯一の導線である。

「読んで納得した読者が、診断を受ける理由を持てるか」を、書く前に一文で言えるかどうかで判断する。言えない語は、記事としては成立しても、受注にはつながらない。

3つのステップで、実際にキーワードを決める

ここまでの内容を、実際の作業手順に落とす。順番を守ることが重要で、ツールを開くのは最後である。

キーワードを決める3つのステップ ツールを開く前に、商談で実際に使われた言葉から始める 1 集める 商談と問い合わせで 実際に出た言葉を書き出す ツールではなく、 自社の会話が出発点 2 振り分ける 4段階のどこに入るか 1語ずつ必ず置く 置けない語は読者像が 曖昧だというサイン 3 決める 3つの問いを通った語を 記事のテーマにする 通らない語は書かずに 候補のまま残す 第2・第3段階から着手する = 受注に近い順に書く
図2|ツールではなく商談の言葉から始め、3つのステップでキーワードを決める。

STEP1|集める:商談で実際に使われた言葉から始める

最初にやるのは、ツールを開くことではない。直近の商談、問い合わせフォームの本文、営業が受けた電話の内容から、顧客が実際に使った言葉をそのまま書き出す。

「反響が取れない」「問い合わせは来るが決まらない」「今の代理店が何をしているか分からない」といった生の表現が集まる。これが検索語の原型になる。ツールで補うのは、この後である。

STEP2|振り分ける:4段階のどこかに必ず置く

集めた語を、先の4段階のどこかに置く。判断に迷う語があれば、「この語を打つ人は、発注の検討をどこまで進めているか」を一文で説明してみる。

段階に置けない語は、読者像がまだ定まっていないという合図である。無理に置かず、いったん保留にする。この段階で候補が減ることは、質が上がっていることを意味する。

STEP3|決める:3つの問いを通った語だけを書く

第2段階と第3段階に置かれた語から順に、3つの問いをあてる。3つすべてを通った語だけを、記事のテーマとして確定させる。

通らなかった語は削除せず、候補として残しておく。実績が増えれば問い1を満たすようになり、競合の状況が変われば問い2の判断も変わる。キーワードの一覧は、一度作って終わりではなく、更新し続ける台帳として扱う。

検索ボリュームが小さい語を、切り捨ててはいけない

受注からの距離で選ぶと、検索ボリュームが小さい語が上位に来る。ツールで数値が表示されない語すら候補に入る。これは、方針として正しい。

検索の一定割合は、毎日新しく生まれている

Googleは、BERTの導入を告知した公式ブログ(2019年)で、毎日数十億件の検索があり、そのうち15%は過去に見たことのないクエリであると述べている。2025年のイベントでも、再計算しても同じ水準が続いているとGoogleの担当者が言及したと報じられている。

検索の一定割合が毎日新しく生まれている以上、過去の集計に出ない語が存在するのは当然である。ツールに数値がないことは、需要がないことの証明にはならない。

ツールに出ない語は、商談の会話の中にある

BtoBの受託サービスでは、そもそも検索する人の母数が小さい。業界特有の言い回しや、複数の条件を重ねた長い検索語は、ツールの集計に現れにくい。

一方でそうした語は、発注の検討が進んだ人ほど使う。STEP1で商談の言葉から始める理由はここにある。数値に出ない語こそ、受注に近い位置にあることが多い。

つまずきやすい3つの点

この方法を実行する過程で、繰り返し起きる問題がある。いずれも、受注からの距離という基準から外れたときに起きる。

1本の記事に複数の段階を詰め込む

用語の説明から、選び方、費用、依頼方法までを1本に入れると、どの段階の読者にも中途半端な記事になる。検索結果でも、何の語に応える記事なのかが判別されにくい。

段階が変われば、読者が知りたいことも、読み終えた後にとる行動も変わる。1本の記事が担う段階は1つに絞り、別の段階は別の記事にして内部リンクで結ぶ。

段階を飛ばして、指名キーワードだけを狙う

受注に最も近いのは第4段階だからと、そこだけを狙う設計は成立しない。指名で検索されるためには、その前に自社を知る機会が必要になるためである。

第2段階と第3段階の記事が、指名検索を生み出す供給源になる。順番は入れ替えられない。

検索順位を成果指標にしてしまう

順位は測りやすいため、目標として採用されやすい。しかし順位が上がっても、その語が第1段階のものであれば、商談は増えない。

測るべきは順位ではなく、その記事を読んだ人から問い合わせが発生したかどうかである。段階ごとに記事を分けておけば、どの段階の読者が動いたかも判別できる。指標の設計は、キーワードの設計と一体で考える。

スリーハンドレッドのアプローチ

スリーハンドレッドは、キーワードの選定を、記事制作の前工程ではなく受注設計の一部として扱っている。どの段階の読者を取りに行くかは、自社の強みがどこで効くかによって変わるためである。

実際の支援では、商談で使われた言葉の棚卸しから始め、4段階への振り分けと3つの問いによる絞り込みまでを、事業側の判断と合わせて進める。記事を書く前に、その記事が受注のどこに効くかを決めておく。

自社のキーワード選定が母数の基準から抜け出せていないと感じる場合は、60分の無料診断で、受注が止まっている箇所を確認することから始めるとよい。

まとめ

キーワード選定の基準を検索ボリュームから受注からの距離に入れ替えると、書くべき記事の順番が変わる。先に着手するのは、課題を自覚した第2段階と、依頼先を比べ始めた第3段階である。

そのうえで、自社が答えを持っているか、検索結果に入り込む余地があるか、無料診断まで導線が引けるかの3つの問いで絞り込む。ツールの数値は桁の感覚をつかむために使い、優先順位は受注からの距離で決める。この順序を守るかどうかで、同じ労力から生まれる商談の数が変わる。

よくある質問

Q. 検索ボリュームはまったく見なくてよいのか

見なくてよいということではない。同じ段階の語が複数あり、どちらから書くか決めかねるときには、桁の感覚をつかむ材料として有効である。優先順位を決める最初の基準にしない、という意味である。

Q. 第1段階の記事は、書く意味がないのか

意味がないわけではない。用語の説明記事は、比較検討段階の記事から参照する土台として機能する。ただし着手の順番としては後であり、第2段階と第3段階の記事が揃ってから取り組むのが妥当と考えられる。

Q. 4段階のどれに入るか判断できない語はどうするか

保留にする。段階に置けないのは、その語を打つ人の状況を具体的に想像できていないためである。実際の商談でその言葉が出た場面を思い出し、検討がどこまで進んでいたかを確認すると、置き場所が決まることが多い。

Q. 競合が同じキーワードを狙っていたらどうするか

検索結果を実際に見て、並んでいる記事が読者の状況にどこまで踏み込んでいるかを確認する。一般論にとどまっている場合は、自社の実務から書ける具体性で差がつく余地がある。逆に踏み込んだ記事が揃っている語は、別の段階や隣接する語に移すほうが早い。

出典:Google「Search Quality Evaluator Guidelines」2025年9月11日版/Google公式ブログ「Understanding searches better than ever before」2019年10月25日/Google広告ヘルプ「月間平均検索ボリュームについて」/Search Engine Journal(2025年)