紹介とリピートで案件が回っているうちは、自社サイトを見る機会がない。ところが既存の取引が一巡し、新規を取りに行こうとした途端に、自社サイトからは問い合わせが来ていないことに気づく。集客を請け負っている会社が、自社の集客で止まっている。

この状態を「自社の案件が後回しだから」と説明するのは、半分しか当たっていない。残りの半分は、サイトに載せている内容が発注者の判断に使えていないという設計の問題である。実績は十分に載っている。にもかかわらず選ばれないのは、足りないのが実績の数ではなく、その実績が自社にも再現される条件だからである。

スリーハンドレッドは、受注からの逆算でWebマーケティングを設計している。この記事では、広告代理店・制作会社・Web支援会社といった受託型の事業者が、自社サイトで新規の相談につなげるために何を書き足すべきかを、発注者が通る判断の順に沿って整理する。

この記事の要点

  • 集客を請け負う会社のサイトは、サービス紹介ではなく仕事の見本として読まれる。実績の見せ方そのものが評価の対象になる。
  • 発注者は実績を見たあと、条件・担当・分担・打ち切りの4つを確かめようとする。ここが書かれていないと、比較の候補に入る前に外れる。
  • 打ち手は実績を増やすことではなく、すでにある実績に前提条件を添えることである。選別・条件化・実名化・出口化の4ステップで整える。

集客を請け負う会社のサイトは、“仕事の見本”として読まれる

受託型の事業では、自社サイトは会社案内ではない。発注者にとっては、その会社が実際にどう考え、どう整理し、どう伝えるのかを確かめられる唯一の無料サンプルである。集客を請け負う会社のサイトは、サービス紹介ではなく仕事の見本として読まれている。

自社サイトは“仕事の見本”として読まれている 出しているのは実績、読まれているのは「自社でも再現するのか」である サイトが出しているもの ・実績ロゴと受賞歴 ・対応できる領域の一覧 ・「伴走します」という姿勢 ・提案力をうたう見出し 発注者が確かめたいこと ・どの条件で出た成果か ・誰が手を動かすのか ・自社は何をどれだけ出すのか ・合わなければどう終わるか この二つがつながっていないため、実績は“その会社で起きた話”で止まる 足りないのは実績の数ではなく、実績が自社に再現される条件である 比較の候補に入る前に外れる 問い合わせが来ないので、原因が分からない “会えば伝わる”が機能しない 会う前に候補が絞られ、提案の場に立てない
図1|サイトが出しているものと、発注者が確かめたいことの断絶を示す図。

発注者は「この会社の集客」を見てから、自社の集客を任せるか決める

製造業であれば、サイトの出来と製品の品質は別物として扱われる。ところが集客やWeb制作を請け負う会社では、サイトそのものが提供物と同じ領域にある。読み手は自然に「自社の集客すらこの状態なら、うちの集客はどうなるのか」と考える。

ここで問われているのは、デザインの新しさや更新の頻度ではない。発注者が見ているのは、情報の並べ方と、判断に必要なことが書かれているかどうかである。見た目を整えても、判断材料が無いままなら評価は変わらない。

比較の土俵は、会う前に三社以内へ絞られている

BtoBの購買行動に関する共同調査(株式会社ITコミュニケーションズ/B2Bマーケティング株式会社、2025年、n=517)では、比較検討した製品・サービスが三つ以内に絞られたケースが81.4%、一つのみだったケースが16.8%を占めた。情報収集で参考にされた情報源は各種Webメディアが49.3%、提供企業のWebサイトが35.4%である。

同じ調査で、今後重視する情報源として単数回答の第一位に挙がったのは提供企業のWebサイトで21.1%だった。つまり候補を絞り込む作業は、営業が接触するより前に、サイトを読む段階で終わっている。“会えば伝わる”という前提は、会う前に候補が絞られる市場では働かない。

同じ調査では、価格帯によって情報源の使われ方が変わることも示されている。300万円未満の比較的低額な商材ではWebに情報収集が偏り、1,000万円以上の高額な商材では展示会やセミナーを含む多様な経路が併用される。受託型の支援は一件あたりの金額がその中間に位置することが多い。

つまりWebだけで発注が決まるわけではないが、Webの段階で候補から外れることは起こる。どれだけ関係構築が得意でも、関係を作る機会そのものが発生しない。

受託型の事業者ほど、この順序を見落としやすい。提案力で勝ってきた経験があるため、土俵に上がることを前提にしてしまう。実際には、提案の場に呼ばれるかどうかがサイトで決まっている。

問い1|条件|“その成果は、どの条件で出たのか”が書かれていない

発注者が実績を見て最初に考えるのは「すごい」ではなく「うちと同じか」である。実績ロゴの一覧は、どの条件で成果が出たのかを一つも語っていない。前提が分からない成果は、自社に当てはめようがない。

実績は“その会社で起きたこと”までしか語っていない

売上が伸びた、問い合わせが増えた、という結果だけを並べても、読み手は再現の可否を判断できない。発注者が知りたいのは、どの業種で、どの程度の事業規模で、どれだけの予算と期間をかけ、先方の社内に誰がいたのかという前提である。

この前提が無いと、実績は「相性の良い会社がたまたまいた話」として処理される。実績の数を増やしても、前提が無ければ同じ処理が繰り返されるだけである。これはBtoBで問い合わせが増えないサイトに共通する「該当」の判断が通っていない状態にあたる。

守秘義務は、条件を出せない理由にはならない

受託型の事業者が実績を出せない最大の理由は守秘義務である。しかし社名とロゴが出せないことと、条件が出せないことは別の話である。社名を伏せたまま、業種・規模・体制・期間・予算の幅だけを残すことはできる。

むしろ社名の無い条件付き実績のほうが、読み手は自社と重ねやすい。有名企業のロゴが並ぶより、自社と同じ従業員規模・同じ商流の案件が一件書かれているほうが、判断は前に進む。

条件として書く項目は、次の四つを基本にするとよい。

  • 業種と商流。何を売っている会社で、誰に売っているのか。BtoBかBtoCか、直販か代理店経由かまで書く。
  • 事業規模。従業員数や拠点数など、社内の意思決定の重さが推し量れる情報を書く。
  • 予算の幅と期間。正確な金額が出せない場合は、幅と、成果が見え始めるまでにかかった期間を書く。
  • 先方の社内体制。専任の担当がいたのか、兼任だったのか。ここが結果を最も左右する。

四つ目を書いている受託型のサイトは少ない。しかし発注者が自社と比べているのは、まさに社内の体制である。専任がいた案件の成果を、兼任しか置けない会社がそのまま期待することはできない。

問い2|担当|“提案した人が、手を動かすのか”が書かれていない

受託型の事業には、会社の実績で受注し、個人の稼働で納品するという構造がある。発注者が任せるのは会社ではなく、実際に手を動かす人である。ここが空白のまま契約を決めるのは難しい。

提案者と実行者が入れ替わる前提は、発注側に知られている

提案の場に出てくるのは役員や営業責任者で、着手後の窓口は別の担当に替わる。この進み方は業界の外にも知られている。だからこそ発注者は、サイトの段階で「誰が担当につくのか」を探している。

ここを埋めずに「経験豊富なチームが対応します」とだけ書くと、確かめられない約束が一つ増える。チームの人数や肩書きではなく、役割ごとに誰が何を担当するのかを書くほうが、読み手の不安は減る。

補足しておくと、これは受託側を責める話ではない。受託型の事業は稼働の波が大きく、提案と実行を同じ人が担い続けるほうが難しい。問題は交代が起きることではなく、交代の前提が書かれていないまま期待だけが膨らむことである。

体制図ではなく、関わる時間を書く

組織図を載せても、実際の関与量は伝わらない。発注者が気にしているのは、担当者が何件を並行して持ち、自社にどれだけの時間を使うのかである。月あたりの打ち合わせ回数と、その間に誰が何をするのかを書くと、関与の度合いが具体的になる。

担当者の実名や経歴を出すかどうかは、人の入れ替わりが起きる受託業では判断が分かれる。出せない場合でも、役割の区分と関与の頻度は書ける。無形商材の導線設計と同じく、確かめられる単位まで下ろすことが要点である。

問い3|分担|“自社は何を、どれだけ出すのか”が書かれていない

受託の提案書は、受け手側がやることばかりが書かれている。しかし実務では発注側の作業量が結果を大きく左右する。制作や運用が止まる原因の多くは、発注側の待ちにある。

発注者は、自社の負担が読めないと決裁に進めない

素材の提供、社内の情報整理、確認と承認の往復、現場へのヒアリングの手配。これらはすべて発注側の工数である。ここが書かれていないと、発注者は「頼めば終わる」と誤解するか、「どれだけ取られるか分からない」と警戒するかのどちらかになる。

どちらの誤解も、着手後の摩擦につながる。先に分担を書いておくことは、受注の確度を上げるだけでなく、着手後の進行を軽くする。

遅れたときに何が起きるかまで書く

  • 必要なもの。発注側が用意する情報・素材・社内の同席者を、工程ごとに列挙する。
  • 必要な時間。それぞれにかかるおおよその時間と、担当する部署を書く。
  • 遅れたときの扱い。提出が遅れた場合に、全体の期間と費用がどう動くかを先に決めておく。

三つ目を書いている受託型のサイトはほとんど無い。しかし発注者が社内で説明を求められるのは、まさにこの点である。遅延時の取り扱いを先に出すことは、稟議を通す材料をそのまま渡すことに等しい。

問い4|打ち切り|“合わなかったとき、どう終われるのか”が書かれていない

受託の契約は、始め方だけが丁寧に書かれていることが多い。終わり方が書かれていない提案は、決裁の場に持ち込めない。決める側が負うのは、始める責任ではなく、やめられなかったときの責任である。

決裁者が確かめるのは、見直す時期と見る指標である

発注を決める人は、現場担当より一段遠い場所にいる。その人が知りたいのは、うまくいっているかどうかを何で判断し、いつ見直すのかという取り決めである。ここが無いと、決裁は保留になる。

何を成果と呼ぶのかを先に合わせておくことも同じ役割を果たす。成果の定義がずれたまま進むと、途中から話が噛み合わなくなる。成果地点の決め方は、受託側が自社の提案に当てはめても同じように効く。

終え方を書くと、始めやすくなる

終了時の手順と、引き渡す成果物の範囲を先に書く。アカウントの権限、制作データ、運用の手順書をどう渡すのかまで決めておくと、発注者は「抜けられなくなる」という不安を外せる。

出口を示すことは、自信の無さの表明ではない。むしろ継続を前提にしない姿勢のほうが、受託の提案では信頼を得やすい。

4つの問いに答える、導線設計の4ステップ

ここまでの4つは、新しい実績を作らなくても埋められる。実績を増やすのではなく、すでにある実績に条件を添えるのが先である。順序は次のとおりである。

4つの問いに答える、導線設計の4ステップ 実績を増やすのではなく、すでにある実績に「条件」を添える順番である 1 選別 出せる実績と出せない実績を分ける 守秘義務で社名を出せない案件は、社名を伏せたまま「条件」だけを残す 2 条件化 成果に前提を添える 業種・事業規模・予算の幅・期間・社内に誰がいたかを、成果とセットで書く 3 実名化 担当と分担を人の単位で出す 提案者と実行者、発注側が出す情報と作業、遅れたときに何が起きるかを書く 4 出口化 見直しと終わり方を先に書く 何を見て判断するか、いつ見直すか、終えるときの手順と引き渡す成果物を書く
図2|4つの問いに答えるための、選別・条件化・実名化・出口化の4ステップを示す図。

STEP1|選別:出せる実績と出せない実績を分ける

過去の案件を、社名まで出せるもの、社名を伏せれば出せるもの、どちらも難しいものに分ける。三つ目に分類されるものは少ない。多くは「確認していないだけ」で、先方に許諾を取れば二つ目に移る。

STEP2|条件化:成果に前提を添える

残した実績それぞれに、業種・事業規模・予算の幅・期間・先方の社内体制を書き添える。数値を出せない場合でも、条件だけなら出せることが多い。条件が揃うほど、読み手は自社との距離を測れる。

STEP3|実名化:担当と分担を人の単位で出す

役割ごとの担当区分と、発注側が出す情報・作業・時間を工程表の形にする。遅れた場合の扱いも同じ表に入れる。ここまで来ると、提案書の前倒しがサイト上で完了している状態になる。

STEP4|出口化:見直しと終わり方を先に書く

見直す時期、そのとき見る指標、終了の手順、引き渡す成果物を書く。自社の強みを言い直す前に、この4つを置くほうが早い。強みの整理が必要になった場合は、4層分析で自社の強みを掘り下げる手順に進む。

事例|“実績豊富”を、再現の条件に書き換える

以下は説明用の仮設例であり、実在の企業や実績ではない。成果の数値は示さず、書き換えの前後だけを比べる。

状況Web制作と広告運用を手がける受託会社。紹介経由の案件が減り、自社サイトからの相談を増やしたい。実績ページには取引先のロゴが並んでいる。
原因実績に前提条件が無く、担当体制と発注側の作業量も書かれていない。読み手は自社に当てはめられず、比較の候補に残らない。
打ち手ロゴの一覧を外し、社名を伏せた条件付きの実績に差し替える。担当の役割区分、発注側が出す情報と時間、見直しの時期と終了手順を同じページに置く。
結果問い合わせの内容が「料金を教えてほしい」から「自社の条件でも可能か」に変わり、初回の商談で確認する項目が減った。

差し替えたのは実績そのものではない。書き換えたのは実績ではなく、実績の読み方である。同じ案件でも、条件が添えられた瞬間に、発注者にとっての意味が変わる。

スリーハンドレッドは、自社の集客も“受注からの逆算”で設計する

受託型の事業者は、自社の案件を最後に回す。稼働が埋まっている時期は営業しなくても困らず、空いた時期には着手する余裕が無い。自社の集客が後回しになるのは、能力ではなく優先順位の構造である。

スリーハンドレッドは、顧客理解・強みの言語化・訴求設計の3ステップで、受注から逆算して導線を設計している。料金は初期費用が0円、生まれた粗利の20%のみの成果報酬で、最低契約期間は6ヶ月である。固定費を増やさずに着手できるため、稼働の波が大きい受託型の事業と相性がよい。

この構造については、問い合わせは来るのに受注できない構造でも扱っている。受託側に回ったときに自社サイトで起きていることは、発注側で起きていることと同じである。現状の4つの問いがどこまで埋まっているかは、無料診断で確認できる。

まとめ|実績は、再現の条件とセットで初めて材料になる

集客を請け負う会社の自社サイトに足りないのは、実績でも提案力でもない。足りないのは、その実績が相手の会社でも再現されるのかを確かめる材料である。条件・担当・分担・打ち切りの4つが、その材料にあたる。

この4つは新しい案件を取らなくても、今ある情報の並べ方を変えるだけで埋まる。実績は、再現の条件とセットで初めて発注者の材料になる。

よくある質問

Q. 守秘義務が厳しく、実績をほとんど出せない。それでも書けるのか。

書ける。出せないのは社名や具体的な数値であって、業種・規模・期間・体制といった条件は多くの場合に出せる。社名の無い条件付き実績でも、読み手は自社との距離を測れる。まず先方に許諾の範囲を確認するところから始めるとよい。

Q. 担当者を明記すると、退職や異動のたびに書き換えが必要にならないか。

実名まで出す必要はない。役割の区分と、月あたりの関与の頻度を書けば足りる。人が替わっても区分は変わらないため、更新の負担は小さい。実名を出す場合は、交代時の引き継ぎの手順を併記しておくと齟齬が起きにくい。

Q. 終わり方を先に書くと、解約を促してしまわないか。

逆に働くことが多い。決裁者が気にするのは、やめられなくなる状態である。出口が示されていると決裁の重さが下がり、着手の判断が早くなる。継続は、終われる状態を作ったうえで選ばれるほうが安定する。

Q. サイト全体を作り直す必要があるのか。

多くの場合は必要ない。4つの問いは、実績ページとサービスページへの書き足しで埋まる。作り直しを先に決めると、載せる内容が決まらないまま制作が始まり、同じ状態の新しいサイトができる。内容を固めてから、必要であれば作り替えるほうが早い。

Q. 成果報酬の場合、粗利はどう計算するのか。

粗利の算定方法や計測の範囲、契約を途中で終える場合の扱いは、事業の形によって変わるため、個別に取り決める。公開している料率と最低契約期間は上記のとおりだが、具体的な条件は打ち合わせの場で確認してほしい。条件が固まらないまま着手することは勧めない。

出典:株式会社ITコミュニケーションズ/B2Bマーケティング株式会社 共同調査「BtoB商材の購買行動に関する実態調査レポート2025」(2025年5月実施、n=517)/スリーハンドレッド公式サイト(料金形態)