リスティング広告の運用代行を比べようとして費用相場を検索すると、「広告費の20%」という数字に何度も行き当たる。ところが別のページでは15〜25%と書かれ、また別のページでは広告費の規模ごとに違う料率が並んでいる。どれが本当の相場なのかを決めようとして、手が止まる。
この食い違いは、調べ方が足りないから起きているのではない。公開されている相場が一致しないのは、料率が「分母ごとに別の金額になる数字」であり、しかも何の作業を含むかが社ごとに違うからである。料率だけを並べても、高いか安いかは決まらない。
スリーハンドレッドは、Web広告の運用代行を成果報酬型で提供している。そのうえで本記事では、自社の料金体系を勧める前に、提示された料率が自社にとって高いのかどうかを判定する手順を扱う。公開されている相場データがどこまで信用できるかを確かめ、料率を自社の粗利・受注・工数に換算し、最後に「相場より安い」提示で何が削られているかを読む。
この記事の要点
- 公開されている費用相場は、費用を公開した一部の代理店の集計である。運用代行の手数料率を調べた公的統計は見当たらない。
- 同じ料率でも支払額は広告費の規模で決まる。料率20%は、広告費が月30万円なら月6万円、月500万円なら月100万円になる。
- 高安は、料率同士の比較では出ない。粗利比・受注1件あたりの代行費・工数原価の3つに換算してはじめて判定できる。
「相場」を調べても判断が付かないのは、料率が分母ごとに違う金額になるからである
費用相場のページが示す「広告費の20%」は、価格ではなく比率である。比率は、掛ける相手が決まらなければ金額にならない。料率は単独では意味を持たず、広告費の規模とセットでしか比べられない数字である
料率は価格ではなく、広告費に対する比率である
月額固定型の運用費は、提示された時点で金額が決まる。料率型はそうではない。料率は毎月の広告費に掛けて請求額になるため、広告費が動けば代行費も動く。同じ契約でも、繁忙期に出稿を増やした月は代行費が増え、止めた月は減る。
この違いは、見積書を並べたときには見えない。見積書に載るのは「20%」という同じ文字列であり、そこから先の金額は自社の出稿計画によって決まる。比べるべき対象は料率ではなく、自社の広告費に掛けたあとの金額である。
同じ料率が、会社によって十数倍の支払額になる
広告費が月30万円の会社と、月500万円の会社が、どちらも料率20%で契約したとする。前者の代行費は月6万円、後者は月100万円である。料率は同じでも、支払額は約17倍に開く。
この差は、単に金額の大小ではない。月6万円で依頼できる作業量と、月100万円で依頼できる作業量は、同じ契約条件のもとでもまったく違う。前者は担当者が自社に割ける時間が限られ、後者は固定報酬で依頼したほうが安く済む可能性が出てくる。同じ料率が、一方では工数不足を招き、もう一方では過大な支払いになる
料金形態そのものの長短、つまり月額固定型・料率型・成果報酬型のどれが自社に噛み合うかは、リスティング広告の運用代行は成果報酬型を選ぶべきかで整理している。本記事は、そのうち料率型について「提示された数字をどう読むか」に絞る。
公開されている費用相場は、どこまで信用できるのか
相場を判断材料にする前に、その数字がどう作られたのかを確かめる必要がある。確かめると、相場表の性質がはっきりする。
手数料を公開している代理店は、調査対象の一部にすぎない
公開情報を集計した調査のひとつに、代理店61社を対象にしたものがある。カオスマップに選出された代理店のHPとサービス資料に書かれた記載を集めたもので、料率を数値で明示していたのは22社、そのうち18社が20%だった。「広告費の20%が相場」という言い方の出どころは、おおむねこの種の集計である。
ただし、この調査は自ら限界を記している。費用を公開していない代理店が多く、項目ごとに言及社数が異なる(手数料29社、最低運用額24社、初期費用14社)。公開されている相場は、費用を公開した代理店だけの相場である。問い合わせないと金額が出ない代理店は、この集計に入っていない。
もう一点、調査の発行元が広告代理店そのものであることも押さえておきたい。これは不正確さを意味しないが、相場の提示者が市場の当事者であるという条件は、数字を読むときに外せない。
同じ料率型のなかに、10%から30%までが並んでいる
先の調査では、20%以外の水準も確認できる。料率25%が2社、15%が1社、10%が1社、範囲で示していた3社は10〜20%・15〜20%・15〜30%と表記していた。最低運用額を「制限なし」としていたのは14社である。
この分布は、20%が「標準価格」ではなく「最も多い提示額」であることを示している。10%の代理店が安売りをしているとも、25%の代理店が高値をつけているとも、料率だけからは言えない。次章で見るとおり、この幅の大部分は作業範囲の違いに吸収される。
運用代行の手数料率を調べた公的統計は見当たらない
では、民間メディアではなく公的統計に当たればよいのではないか。実際に探すと、広告業そのものの統計は存在する。日本標準産業分類では広告業は中分類73として大分類L「学術研究,専門・技術サービス業」に置かれ、売上高などの統計が整備されている。
しかし、広告運用代行の手数料率を調査した公的統計は、現時点で見当たらない。料率は個別契約の条件であり、統計調査の対象になっていない。つまり相場の根拠は、業界メディアの集計より上には遡れない。相場表を「参考値」として扱うべき理由は、ここにある。
料率の高安は、料率同士を比べても出てこない
相場が参考値でしかないなら、何を比べればよいのか。比較の対象を、料率から「料率が覆う範囲」に移す。
料率の差は、価格の差ではなく作業範囲の差であることが多い
料率に何が含まれるかは、代理店ごとに違う。アカウントの構築、キーワードと除外キーワードの設計、入札調整、広告文の作成と改善、LPの改修、コンバージョン計測の実装、レポートの作成、定例会議の運営。これらのどこまでを料率が覆うかは、見積書の料率欄には書かれていない。
料率の差として見えているものの多くは、価格差ではなく、含まれる作業の差である。15%の代理店が安いのではなく、運用操作だけを請け負っているのかもしれない。25%の代理店が高いのではなく、LPの改修と計測の実装まで引き受けているのかもしれない。範囲を揃えずに料率を比べることは、内容量の違う商品の値札だけを比べることに等しい。
| 作業 | 確認すること | 含まれない場合に起きること |
|---|---|---|
| アカウント構築 | 新規に作るのか、既存を引き継ぐのか | 初期費用として別請求になる |
| 計測の実装 | コンバージョン計測を誰が設定するのか | 成果が受注まで戻らず、判断材料が揃わない |
| 広告文・クリエイティブ | 作成と改善の本数に上限があるか | 改善が止まり、運用が入札調整だけになる |
| LPの改修 | 提案までか、制作まで含むか | 制作会社への外注費が別に乗る |
| レポートと定例会議 | 頻度と、誰が出席するのか | 媒体の数字の報告で終わり、受注の話に戻らない |
実質の料率は、含まれない作業を外注した合計で出す
範囲の違いを金額に直すと、見積書の順位が入れ替わることがある。広告費が月100万円で、A社が料率20%でLPの改修と計測の実装まで含む、B社が料率15%で運用操作のみ、という2つの提示を考える。
A社の代行費は月20万円である。B社は月15万円だが、LPの改修を別の会社に月20万円で頼むなら、合計は月35万円になる。広告費に対する比率に戻せば35%であり、A社の20%より高い。比べるべきは提示された料率ではなく、必要な作業をすべて揃えたあとの実質料率である
この計算をするには、自社に残す作業と外に出す作業を先に決めておく必要がある。依頼範囲の決め方は、BtoB企業のWeb広告運用代行ガイドで扱っている。
換算1・2|粗利比と受注1件あたりに直して読む
実質料率まで出せたら、次は自社の事業の数字に換算する。広告費に対する比率は、代理店側の都合で決まった分母である。自社にとっての分母は、粗利と受注である。
換算1|代行費が、広告から得た粗利の何%を占めるか
受注1件あたりの粗利が60万円、広告経由の受注が月5件の会社を考える。月の粗利総額は300万円である。広告費が月500万円で料率20%なら、代行費は月100万円。粗利総額に対する比率は約33%になる。
この数字は、広告費に対する20%とはまったく違う印象を与える。料率は広告費に対する割合ではなく、広告から得た粗利に対する割合で見なければ、自社にとっての重さが分からない。粗利比が何%までなら許容できるかは、商材の粗利率と、広告以外の販管費によって会社ごとに違う。他社の相場から借りられる数字ではない。
なお、これらは説明用の仮定値であり、相場ではない。料金形態ごとの支払額を同じ条件で並べた試算は、成果報酬と固定報酬、どちらが得かは受注件数では決まらないにある。
換算2|受注1件あたり、代行費がいくら乗っているか
同じ条件を受注件数で割ると、代行費は受注1件あたり20万円になる。この形に直す利点は、営業の現場が持っている感覚と突き合わせられることである。受注1件に20万円の獲得費用を乗せてよいかは、受注単価と粗利率を知っている人なら判断できる。
逆に、受注件数が読めない段階では、この換算は使えない。広告を始める前であれば、受注目標から必要な予算を逆算するほうが先になる。その手順は中小企業のWeb広告、月いくらから始めるべきかで扱っている。
換算3|工数原価に直すと、料率の下限が見えてくる
粗利比と受注1件あたりは、支払う側から見た換算である。もう一方の側、つまり受け取る代理店が何時間働けるのかに直すと、相場の下限がどこから来ているのかが分かる。
代行費を時間あたりの給与額で割ると、買える時間が出る
賃金構造基本統計調査によれば、広告業を含む大分類「学術研究,専門・技術サービス業」の所定内給与額は、一般労働者の男女計で月440.3千円である(産業計は340.6千円、情報通信業は406.0千円)。月44万円として、1日8時間・月20日=160時間で割ると、1時間あたり2,750円になる。
これは給与額だけの数字で、法定福利費も、オフィスや管理部門の間接費も、利益も含まない。それでもこの単価で割れば、代行費が何時間分に相当するかの上限が出る。広告費月30万円・料率20%の代行費6万円は約22時間、広告費月500万円の代行費100万円は約360時間である。料率の下限は相場で決まっているのではなく、運用に必要な時間から決まっている
最低手数料の下限は、この計算とおおむね整合する
先の61社調査では、最低手数料の下限額を明示していた11社の金額が3万円から20万円に分布し、最も多いのが5万円(4社)、次が10万円(3社)だった。初期費用は9社が0円、有料は5社である。
最低手数料5万円を先の単価で割ると約18時間になる。法定福利費や間接費を乗せれば、実際に自社に割かれる時間はこれよりさらに短い。月18時間は、週あたり4時間強である。ミニマムフィーが5万円前後に集まる理由は、相場の横並びではなく、それ未満では運用が成立しないという供給側の制約だと読める。
「相場より安い」提示で削られているのは、価格ではなく時間である
ここまでの換算を踏まえると、相場を下回る提示の読み方が変わる。安い提示は、同じものが安く買えるという意味ではない。
下限を下回る提示では、作業範囲か担当体制のどちらかが薄い
時間あたりの単価が業界でおおむね共通なら、代行費が下がったときに動くのは時間のほうである。相場を下回る提示で削られているのは価格ではなく、自社に割かれる時間である。削り方には型があり、確認すべき点もそれぞれ違う。
- 作業範囲を狭める。入札と予算の調整だけを行い、広告文の改善やLPへの言及を行わない。実質料率の計算で差が出る。
- 担当社数を増やす。1人が多くの会社を持つことで単価を下げる。確認するのは担当者が持つ社数と、定例会議の頻度である。
- 自動化に寄せる。媒体の自動入札に任せ、人の判断を減らす。悪いとは限らないが、成果地点の設計が甘いままだと最適化の方向が事業成果からずれる。
- レポートを定型化する。媒体の数字をそのまま出力する。受注まで戻らないレポートは、判断材料にならない。
いずれも、料率の数字には現れない。提示額の低さを理由に断る必要はないが、どの型で下げているのかを聞かずに受けると、安く買ったつもりで必要な時間を失う。
高い提示を断るかどうかも、同じ換算で決まる
逆の側も同じである。料率25%の提示が高いかどうかは、実質料率に直し、粗利比と受注1件あたりに換算してから決める。範囲を広く覆っていて粗利比が許容範囲に収まるなら、25%は高くない。
料率の水準より先に見るべきものがあるという論点、つまり報酬の決まり方と自社の利益が同じ方向を向いているかについては、広告代理店を変えるべき5つのサインで扱っている。換算で金額の妥当性を確かめたうえで、利害の向きを別に確認するのが順序である。
スリーハンドレッドは、料率を提示する前に成果地点を決める
ここまでの換算は、どの料金形態でも使える。ただし換算の精度は、何を成果と呼ぶかが決まっているかどうかで変わる。受注1件あたりの代行費を出すには、受注が計測できていなければならない。粗利比を出すには、受注の粗利が分かっていなければならない。
スリーハンドレッドは、Web広告の運用代行を成果報酬型で提供している。料率の提示より先に、成果をどの地点で測るかを設計する。成果地点の決め方そのものは成果報酬の“成果地点”の決め方で公開している。契約条件の詳細は商材と計測の状況によって変わるため、個別に確認したうえで提示している。
現在の代行費が自社の粗利に対して重いのかどうかを確かめたい場合は、無料診断で、広告費・受注件数・粗利から換算した数字をお示しする。サービスの全体像はサービス紹介にある。
まとめ|「20%は高いか」は、換算した時点で答えの出る問いに変わる
公開されている費用相場は、費用を公開した代理店だけの集計であり、手数料率を調べた公的統計は見当たらない。料率は広告費という分母に依存するため、同じ20%でも支払額は会社によって十数倍に開く。そして料率の幅の多くは、含まれる作業範囲の違いに吸収される。
だから順序は、分母を揃え、範囲を揃え、そのうえで粗利比・受注1件あたり・工数原価に換算する、となる。「20%は高いのか」は他社との比較では答えが出ないが、自社の粗利と工数に換算した時点で、答えの出る問いに変わる
よくある質問
Q. 相場表の数字は、まったく参考にしなくてよいのか。
交渉の目安としては使える。ただし「標準価格」としては使えない。公開されている集計は、費用を公開した代理店だけを対象にしており、問い合わせないと金額が出ない代理店は含まれていない。相場から外れていることを理由に断るのではなく、外れている理由を聞く材料として使うのが妥当である。
Q. 料率は交渉できるのか。
料率そのものを下げる交渉より、料率に含める作業範囲を動かす交渉のほうが成立しやすい。自社でできる作業を引き取る、レポートの頻度を落とす、媒体を絞るといった調整は、代理店側の工数に直接効く。実質料率を下げる方向で話すと、双方の計算が合いやすい。
Q. 成果報酬型なら、こうした換算は不要になるのか。
不要にはならない。成果報酬型でも、支払額を粗利総額と受注件数で割る換算は同じように必要である。変わるのは分母が広告費ではなくなる点で、代わりに「何を成果と呼ぶか」の定義が支払額を左右する。先の61社調査の一覧には成果報酬型の該当がなく、市場では依然として少ない形態である点も踏まえておきたい。
Q. 広告費が少額のうちは、どの形態が妥当なのか。
一概には決まらないが、料率型は分母が小さいほど代行費が最低手数料に張り付き、実質料率が高くなる。広告費が最低手数料の数倍に届かない段階では、料率型より月額固定型のほうが支払額が読みやすい場合がある。どの形態でも、受注が計測できているかを先に確かめるほうが効果が大きい。
出典:株式会社PLAN-B「61社を徹底調査!リスティング広告運用代行の手数料・費用相場」(2024年9月6日更新)/厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査の概況」(令和8年3月24日公表)/総務省 日本標準産業分類(令和5年7月改定、e-Stat 分類項目)。本文中の金額のうち、広告費・粗利・受注件数・時間の例は説明用の仮定値であり、相場を示すものではない。