月額固定の見積書と、成果報酬型の提案書が机の上に並んでいる。どちらにも「御社の受注を増やす」と書いてあり、違うのは料金の数字だけに見える。だが、この二枚をどれだけ見比べても、どちらが得かという答えは出てこない。

理由は単純である。三つの料金形態は、そもそも支払額が同じ数字に連動していない。料金表に書かれた料率は、何に掛ける料率なのかが型ごとに違うため、パーセントの大小を並べても比較にならないのである。

この記事では、月額固定・広告費連動の手数料・粗利連動の成果報酬という三つを、同じ条件に置き直して並べる。以下に出てくる金額と料率は、すべて説明のために置いた設計上の数であり、実在の企業の実績でも、当社が提示している条件でもない。自社の数字を入れ替えて使うための型として読んでいただきたい。

この記事の要点

  • 三つの料金形態は、月額固定は工数、手数料型は広告費、成果報酬型は粗利と、それぞれ別の数字に連動する。料率の大小を並べても比較にならない。
  • 同じ条件で並べると、順位は受注件数ではなく月あたりの粗利総額で入れ替わる。分岐点は「固定の運用費 ÷ 成果報酬の料率」で計算できる。
  • 試算が崩れるのは、成果の定義・媒体費の負担者・最低契約期間の三点である。料率が決まっていても、この三つが未確定なら比較は成立しない。

「どちらが得か」は、料金表を並べても決まらない

見積書を横に並べて安いほうを選ぶという方法は、同じ単位の数字が並んでいるときにしか機能しない。広告運用の見積書は、単位がそろっていない状態で発注側に渡される。まずは、そろえるところから始める必要がある。

料金表は、そのままでは比べられる形になっていない

月額固定型は「月いくら」と金額で書かれる。手数料型は「広告費の何パーセント」と書かれる。成果報酬型は「成果の何パーセント」と書かれる。三つとも単位が違い、しかも後ろの二つは、掛ける対象が確定しないと金額にならない。

つまり料金表の時点では、手数料型と成果報酬型はまだ金額ではない。金額になるのは、広告費をいくら使ったか、成果がいくつ出たかが決まったあとである。発注前に比べるには、その「掛ける対象」の側を自社で仮に置くしかない。

媒体費を外し、運用費だけを比べる

比較を濁らせる最大の要因が、媒体費である。媒体に支払う広告費は、どの料金形態を選んでも発生する実費であり、通常は発注側が負担する。媒体費は、運用会社の取り分ではない。

ここを混ぜたまま「総額でいくらか」を比べると、広告費の多寡が運用費の差を覆い隠してしまう。本記事では媒体費を三つの型で同額に固定し、運用会社に支払う運用費だけを比べる。

受注件数ではなく、1件あたりの粗利まで分解する

もうひとつ、発注側が省略しがちなのが粗利の分解である。「月に何件受注できたか」だけでは、成果報酬型の支払額は計算できない。成果報酬が粗利に連動するなら、必要なのは件数ではなく粗利の総額だからである。

比べる前にそろえる数字は、次の五つである。この五つが埋まっていない状態で見積書を比較しても、答えは出ない。

  1. 月間の媒体費:媒体に支払う広告費。三つの型で同額に置く。
  2. 受注1件あたりの粗利:受注売上から直接原価を引いた、1件あたりの残り。
  3. 月間の受注件数:下振れ・標準・上振れの三水準で置くと、順位の入れ替わりが見える。
  4. 各型の運用費:固定額、または料率と、その料率が掛かる対象(広告費か、粗利か)。
  5. 最低契約期間と最低保証の有無:成果が出なかった月に、いくら払うことになるか。

三つの料金形態は、支払額が「別の数字」に連動している

料率の数字が同じでも、掛ける相手が違えば支払額は一致しない。比べるべきは料率ではなく、「何が増えたときに支払額が増えるか」という連動の向きである。三つの型を、その観点で並べ直す。

支払額は、それぞれ別の数字に連動する 同じ料率でも、連動先が違えば支払額は一致しない 月額固定 連動する数字 工数・時間 受注が増えても、 広告費が増えても一定 成果が下振れしても 支払額は変わらない 広告費連動 連動する数字 広告費 受注が増えても一定。 広告費を増やすと増える 広告費の増額提案が 通りやすい構造になる 粗利連動 連動する数字 粗利 受注が増えると増える。 下振れすると減る 成果の下振れを 受託側も一緒に負う 比べるのは料率ではなく、「何が増えたときに支払額が増えるか」 この違いが、受注が伸びた局面で順位を入れ替える
図1|三つの料金形態は、支払額が別の数字に連動する。比べるべきは料率ではなく連動先である。

月額固定型は、成果にも広告費にも連動しない

月額固定型が連動しているのは、運用にかかる工数と時間である。受注が伸びても支払額は変わらず、広告費を増やしても変わらない。発注側から見れば、支出が読めるという利点がある。

一方で、成果が下振れした月も支払額は同じである。成果のぶれは、全額が発注側の負担になる。固定費型を選ぶということは、読みやすさと引き換えに、下振れのリスクを自社で持つという選択である。

手数料型は、広告費に連動する

手数料型が連動しているのは広告費であり、受注でも粗利でもない。そして広告費そのものは、運用の結果として動く変数である。検索広告の課金方式であるクリック単価制では、広告がクリックされるたびに料金が発生する。

Google広告のヘルプによれば、実際のクリック単価は多くの場合で上限クリック単価より低くなり、オークションの結果は入札単価や広告とランディングページの品質など六つの要素で決まる。広告費は、入札と品質の調整によって動かせる数字なのである。

この構造から、よく指摘される論点が出てくる。手数料型では、広告費が増えると運用会社の取り分も自動的に増える。受注が増えなくても、である。

粗利連動型は、粗利に連動する

粗利連動型は、受注から直接原価を引いた粗利に料率を掛ける。受注が増えれば支払額も増え、下振れすれば支払額も減る。成果のぶれを、発注側と受託側が一緒に負う形になる。

ただし、これは「安い」という意味ではない。成果が伸びた局面では、支払額は三つの型のなかで最も大きくなりうる。次の章で、同じ条件に置いて確かめる。

同じ条件で並べる|受注が3件・5件・10件のとき、支払額はどう動くか

前提を置く。月間の媒体費を100万円、受注1件あたりの粗利を30万円とし、月額固定型の運用費を20万円、手数料型の料率を広告費の20%、粗利連動型の料率を粗利の20%とする。繰り返すが、これらはすべて説明用の設計上の数である。

受注が3件のときは、粗利連動型がいちばん安い

受注が3件なら粗利総額は90万円で、粗利連動型の支払額は18万円になる。月額固定型は20万円、手数料型も広告費100万円の20%で20万円である。粗利連動型が最も安い。

手残りの粗利で見ると、月額固定型と手数料型が70万円、粗利連動型が72万円となる。成果が小さい月は、成果に連動する型のほうが軽い。これは直感とも一致する。

受注が増えると、順位が入れ替わる

受注件数月額固定型手数料型(広告費20%)粗利連動型(粗利20%)
受注3件(粗利90万円)20万円20万円18万円
受注5件(粗利150万円)20万円20万円30万円
受注10件(粗利300万円)20万円20万円60万円
手残り粗利(受注10件)280万円280万円240万円

受注が5件になると粗利総額は150万円、粗利連動型の支払額は30万円となり、固定型と手数料型の20万円を上回る。受注10件では粗利総額300万円に対して支払額60万円となり、差は大きく開く。成果報酬型が高くつくのは、失敗したときではなく、成功したときである。

この入れ替わりは、どちらかの型が不当だという話ではない。成果が伸びた局面で受託側の取り分が増えるのは、成果に連動させると決めた以上、設計どおりの挙動である。問題になるのは、発注側がこの挙動を想定せずに契約したときだけである。

広告費を増やした月だけ、手数料型の支払額が動く

ここまでは広告費を固定して受注だけを動かした。今度は逆に、受注を5件のまま固定し、広告費だけを100万円から200万円に増やしてみる。

受注が変わらないまま、支払額だけが増える

条件月額固定型手数料型粗利連動型
広告費100万円・受注5件20万円20万円30万円
広告費200万円・受注5件20万円40万円30万円

受注件数も粗利も変わっていないのに、手数料型の支払額だけが20万円から40万円に増えた。月額固定型と粗利連動型は動かない。手数料型だけが、成果と無関係に支払額を増やす経路を持っている。

「広告費を増やす提案」が通りやすい構造になる

この性質が実務で現れるのは、増額提案の場面である。広告費を増やせば運用会社の取り分も増えるため、増額の提案は運用会社にとって常に有利な選択肢になる。

これは個々の担当者の誠実さの問題ではなく、契約の構造から生じる傾向である。だからこそ、手数料型を選ぶ場合は、増額の判断基準を契約時に発注側で決めておく必要がある。増額の可否を、提案する側の判断だけに委ねない。

分岐点を決めるのは受注件数ではなく、月あたりの粗利総額である

ここまでの表を見ると、受注3件と5件の間で順位が変わるように見える。しかし、分岐しているのは件数ではない。順位を決めているのは、受注件数ではなく月あたりの粗利総額である。

分岐点は「固定の運用費 ÷ 成果報酬の料率」で出る

粗利連動型の支払額は、粗利総額に料率を掛けた金額である。これが月額固定型の運用費と等しくなる点が分岐点であり、式にすれば「固定の運用費 ÷ 成果報酬の料率」になる。

今回の前提では、20万円を20%で割って100万円。つまり月あたりの粗利総額が100万円を超えた時点で、粗利連動型のほうが高くなる。この式は、自社の数字を入れれば、そのまま使える。

1件あたりの粗利が小さい事業では、分岐点が遠くなる

前提受注1件あたり粗利30万円受注1件あたり粗利10万円
分岐点の粗利総額100万円100万円
分岐点となる受注件数3.3件10件
月に5件受注したとき粗利連動型が高い粗利連動型が安い

同じ月5件の受注でも、1件あたりの粗利が30万円の事業と10万円の事業では、有利な型が逆になる。件数だけを見て「うちは5件だから成果報酬は高い」と判断すると、半分の事業で結論を誤ることになる。

単価の高い商材ほど分岐点は近く、単価の低い商材ほど分岐点は遠い。自社の商材単価が、どちらの型と相性がよいかを先に決めているのであって、料金表が決めているのではない。

この試算が崩れる三つの前提

ここまでの計算は、三つの前提の上に成り立っている。どれかが契約書で違う形になっていれば、表の数字はそのまま使えない。

成果の定義が「問い合わせ」だと、分母そのものが変わる

成果報酬型の支払額は、何を成果と呼ぶかで全く別物になる。成果地点が問い合わせに置かれていれば、受注につながらない問い合わせにも報酬が発生する。この場合、支払額は粗利ではなく問い合わせ件数に連動することになり、本記事の試算はそのままでは使えない。

成果地点をどこに置くかは、料率よりも先に決める項目である。成果地点の決め方については、当サイトの別記事で四つの判断項目として整理している。

媒体費の負担者が変わると、比較の土台が壊れる

本記事では媒体費を発注側の負担として三つの型で同額に固定した。もし媒体費が運用費に含まれる契約であれば、金額の意味が変わるため、まず媒体費を切り出してから比べ直す必要がある。

見積書に「広告費込み」と書かれている場合、その内訳が開示されるかどうかを確認する。内訳が開示されないと、運用費が実質いくらなのかを計算できない。

最低契約期間と最低保証が、下振れした月の支払額を決める

成果報酬型は、成果が出なければ支払額が減る仕組みである。しかし最低保証の金額が設定されていれば、下振れした月でもその金額は発生する。最低契約期間が六カ月であれば、途中で成果が出なくても、その期間の支払い義務は残る。

試算で「下振れした月は安い」と計算したなら、その前提が契約書で担保されているかを確認する。下振れ時の支払額を決めるのは料率ではなく、最低保証と最低契約期間の条項である。

「完全成果報酬」という言葉は、景品表示法の論点を含む

料金形態を比べていると、「完全成果報酬」「初期費用0円」といった表記に出会う。この種の表記は、何が無料なのかが限定されている場合が多く、表示のルール上も注意が必要な領域である。

有利誤認表示の観点で、何が無料なのかを確かめる

景品表示法では、価格その他の取引条件について、実際のものより取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示を有利誤認表示として定めている(第5条第2号)。また、内容が実際より著しく優良であると示す表示は優良誤認表示とされる(同条第1号)。

発注側として確かめるべきは、「完全」の範囲である。媒体費は別途か、初期費用は本当に発生しないか、成果が出た月に何が加算されるか。無料なのは運用費だけで、媒体費は実費として別に請求されるという構造が、最も見落とされやすい。

自社が訴求する側に回るときも、同じ基準が効く

この論点は、発注側だけの話ではない。広告代理店や制作会社が自社サービスを成果報酬型として打ち出すときにも、同じ規制が適用される。

景品表示法には不実証広告規制もあり、効果や性能に関する表示について合理的な根拠を示す資料の提出を求められた場合、提出できなければ、措置命令との関係では不当表示とみなされる(第7条第2項)。効果の訴求には、提出できる根拠を用意しておく必要がある。

自社の側を決める三つのステップ

以上をふまえると、判断の順序は料金表からではなく、自社の粗利から始まる。料金形態の選択は、相場の知識ではなく自社の数字で決まる。次の三段階で確かめればよい。

自社の側を決める、3つのステップ 料金表から入らない。自社の粗利から入る 1 粗利総額を出す 受注件数 × 1件あたりの粗利 件数だけを見ていては 分岐点は決まらない 2 分岐点を計算する 固定の運用費 ÷ 成果報酬の料率 超えれば固定型が安く、 届かなければ成果型 3 増額局面を想定する 広告費を増やす月に どの型の支払いが増えるか 手数料型だけが、成果と 無関係に増える “どちらが得か”は、料金表ではなく自社の粗利で決まる
図2|自社の側を決める三つのステップ。料金表ではなく、自社の粗利総額から判断する。

STEP1|月あたりの粗利総額を出す

直近の数カ月について、受注件数と1件あたりの粗利を掛け、月あたりの粗利総額を出す。粗利は受注売上から直接原価を引いた金額とし、販管費は引かない。ここで件数だけを見てしまうと、次の計算ができない。

STEP2|分岐点の粗利総額を計算する

検討している月額固定型の運用費を、検討している成果報酬型の料率で割る。出てきた金額が分岐点の粗利総額である。STEP1で出した自社の粗利総額がこれを上回るなら固定型が安く、下回るなら成果報酬型が安い。

ここで両方の見積書が手元にない場合は、仮の数字でよい。分岐点が自社の実績と大きく離れているなら、片方の型は検討する必要すらないことが分かる。

STEP3|広告費が増える局面を想定する

最後に、広告費を増やす可能性を織り込む。新商材の立ち上げや繁忙期に向けて広告費を増やす予定があるなら、手数料型の支払額はその分だけ増える。成果が追いつかない月があっても、支払額は広告費に従って増える。

この三段階を通ると、「どちらが得か」という問いは「自社の粗利総額は分岐点のどちら側にあるか」という問いに置き換わる。置き換わった時点で、答えは見積書ではなく自社の帳簿の側にある。

まとめ

月額固定・手数料型・粗利連動型の三つは、安いか高いかではなく、支払額が何に連動するかが違う。月額固定は工数に、手数料型は広告費に、粗利連動型は粗利に連動する。料率のパーセントだけを見比べても、この違いは見えない。

そして順位を分けるのは受注件数ではなく、月あたりの粗利総額である。分岐点は「固定の運用費 ÷ 成果報酬の料率」で計算でき、自社の数字を入れれば結論は自分で出せる。料金形態の比較は、見積書を読む作業ではなく、自社の粗利を確かめる作業である。

自社の受注1件あたりの粗利がいくらで、月あたりの粗利総額がどの水準にあるか。そこが分からないまま見積書を比べている状態であれば、無料診断で現状の数字の置き方から一緒に整理することもできる。

よくある質問

Q. 記事の金額や料率は、実際の相場なのか。

いいえ。本記事の金額と料率は、三つの型を同じ条件で比べるために置いた設計上の数であり、相場として調査した数値ではない。広告運用の料金は公表されていない部分が多く、本記事では相場を示す目的を取っていない。自社が受け取った見積書の数字に置き換えて使っていただきたい。

Q. 成果報酬型のほうが、結局は高くつくということか。

成果が伸びた局面では高くなりうるが、それは下振れした月に支払額が減ることと裏表である。どちらが得かは、自社の粗利総額が分岐点のどちら側にあるか、そして成果のぶれをどちらが負うべきかで決まる。支出の読みやすさを優先するなら固定型、下振れのリスクを分担したいなら成果報酬型が合う。

Q. 成果報酬型の「成果」は、どう決めればよいのか。

料率よりも先に成果地点を決める。問い合わせを成果にすると、受注につながらない問い合わせにも報酬が発生し、発注側の粗利と連動しなくなる。受注や粗利など、自社の損益に近い地点に置くほど、料金形態と事業の利害が一致する。

Q. 手数料型は選んではいけないのか。

そうではない。広告費の総額が安定していて、運用の工数を外部に出したいだけであれば、手数料型は扱いやすい。注意すべきは増額の局面であり、広告費を増やす判断の基準を契約時に発注側で決めておけば、構造上の偏りは抑えられる。

出典:消費者庁「表示規制の概要」(景品表示法第5条第1号・第2号、第7条第2項、第8条第3項)/Google広告ヘルプ「クリック単価(CPC)」/Google広告ヘルプ「Google広告のオークションの仕組み」。本記事の金額・料率は説明用の設計上の数であり、実績値ではない。