成果報酬型の提案を並べて比較したのに、どれを選べばよいのか決まらない。料率は読めるのに、その料率が何に掛かるのかが各社で違う。そういう状態で相見積もりを取っても、金額の大小以外に比べるものが残らない。
原因は、料金形態の優劣ではない。成果報酬型が噛み合うかどうかは、料率ではなく“成果”をどこに置くかで決まる。同じ「成果報酬」という言葉が、問い合わせ1件への課金から、受注した粗利への連動まで、まったく違う契約を指している。
スリーハンドレッドは、広告代理店・制作会社などの受託型BtoB事業に対して、Webマーケティングを成果報酬で請け負っている。この記事では、成果報酬の料金が3つの型に分かれる理由、自社に向くかどうかの判定、そして契約前に決めておく項目を順に整理する。
この記事の要点
- 成果報酬の違いは料率ではなく、報酬が発生する地点にある。CV課金型・売上連動型・粗利連動型の3つは、受注からの距離が違う。
- 成果報酬が割高になるのは、失敗したときではなく成功したときである。それでも選ぶ理由は、着手時点のリスクを誰が持つかにある。
- 契約前に決めるのは成果の定義・計測方法・実費の扱い・契約期間・契約終了後の扱いの5項目。判定できない定義は契約に書かない。
成果報酬型Webマーケティングは、料率ではなく「成果の定義」で決まる
成果報酬型とは、あらかじめ定めた成果が発生したときにだけ報酬が発生する契約の形である。揉めるのは成果報酬という料金形態ではなく、“成果”の定義が共有されていない契約である。
依頼側と受託側は、同じ言葉で違うものを指している
依頼側が成果報酬に期待するのは、支出を結果に連動させることである。受注が増えた分だけ払い、増えなければ払わずに済む形を求める。媒体費も含めて抑えたいという希望が加わることも多い。
一方で受託側が成立条件として見ているのは、報酬の発生を自力で判定できるか、着手から発生までの工数を回収できるか、媒体費を立て替えずに済むかである。この3点が揃わないと、成果報酬は受けられない。
両者はどちらも誠実に「成果」の話をしている。それでも、報酬が発生する地点を文章で一致させないまま契約すると、毎月の請求のたびに認定の交渉が発生する。
法律上も、成果報酬は「成果の引渡し」を前提に組まれている
民法には、委任事務の履行によって得られる成果に対して報酬を支払う旨を約した場合の規定がある(第648条の2、2017年改正で新設。改正法は2020年4月1日施行)。いわゆる成果完成型の委任である。
条文が前提にしているのは、報酬の対象となる「成果」が特定されていることである。つまり成果報酬型の契約は、成果を言葉で特定できて初めて成立する。定義を曖昧にしたまま料率だけを合わせる進め方は、法律が想定している順番と逆になっている。
成果地点の決め方そのものは、成果報酬の“成果地点”の決め方で4項目に分けて扱っている。本記事は、その成果地点の違いが料金形態としてどう現れるかを整理する。
成果報酬には3つの型がある|報酬の起点で比較する
成果報酬を分けるのは、報酬が発生する起点である。3つの型の違いは、報酬が受注からどれだけ離れた場所で発生するかにある。
CV課金型|問い合わせや資料請求の1件ごとに課金する
最も広く使われている型である。問い合わせ、資料請求、申込などのコンバージョン1件につき単価が決まり、件数に応じて報酬が発生する。判定がはっきりしており、着手から報酬発生までが短いため、受託側にとって運用しやすい。
弱点は、報酬が受注から最も遠い場所で発生することである。確度の低い問い合わせも1件として報酬の対象になるため、件数を増やす方向に力が働く。問い合わせは増えたが商談が増えないという状態は、この構造から生まれる。
この型を選ぶなら、成果として数える問い合わせの条件を絞り込む必要がある。条件を絞る考え方は、問い合わせの“手前”に、見る指標がないで扱っている。
売上連動型|受注した売上に料率をかける
受注が確定した売上に対して料率をかける型である。報酬の発生地点が受注まで下がるため、確度の低い問い合わせが報酬につながらなくなる。依頼側から見ると、CV課金型より利害が揃いやすい。
ただし売上は、原価の重さを映さない。原価率の高い案件ばかりが増えると、売上は伸びて報酬も増えるのに、依頼側の手元に残る利益は減る。受注単価の大きい商材や、案件ごとに原価率が大きく振れる事業では、この歪みが出やすい。
また、受注の判定時点をいつにするかが問題になる。契約書の締結日か、検収か、入金か。この一点を決めずに運用すると、月末の請求で必ず止まる。
粗利連動型|受注売上から直接原価を引いた額に料率をかける
受注売上から直接原価を差し引いた粗利に料率をかける型である。報酬の算定基礎が、依頼側の手元に残る利益と同じものになるため、受注の質がそのまま報酬に跳ね返る。
成立の条件は厳しい。粗利を算定するには、依頼側が案件ごとの直接原価を開示し、その集計を続けられる必要がある。原価の定義が社内で固まっていない事業では、算定の前段で止まる。
3つの型を、報酬の起点と向く条件で並べると次のようになる。
| 型 | 報酬の起点 | 受注からの距離 | 成立に必要なもの |
|---|---|---|---|
| CV課金型 | 問い合わせ・資料請求などのCV1件 | 遠い | CVの条件の絞り込み |
| 売上連動型 | 受注した売上 | 近い | 受注の判定時点の合意 |
| 粗利連動型 | 受注売上から直接原価を引いた粗利 | 最も近い | 案件別の直接原価の開示と集計 |
成果報酬が割高になるのは、失敗したときではなく成功したときである
成果報酬は「成果が出なければ払わない」形として語られることが多い。ただし費用の総額で見ると、話は逆向きになる。成果報酬が割高になるのは、失敗したときではなく成功したときである。
固定報酬との損益分岐は、受注が増えるほど成果報酬に不利になる
固定報酬は、成果が出ても出なくても金額が変わらない。成果報酬は成果に比例して増える。したがって成果が小さいうちは成果報酬のほうが安く、ある水準を超えると固定報酬のほうが安くなる。分岐点がどこに来るかは、料率と受注規模の組み合わせで変わる。
この構造は、依頼側が成果報酬に不満を持つ典型的な経路になる。施策が機能して受注が伸びた月に、請求額が最も大きくなるからである。想定していなかった場合、成功そのものが交渉の火種になる。
避ける方法は、契約前に試算しておくことに尽きる。現在の受注水準と、目標とする受注水準の両方で報酬額を計算し、どの水準で固定報酬と並ぶかを確かめておく。並ぶ水準が見えていれば、成功したときに驚かない。
それでも成果報酬を選ぶ理由は、着手時点のリスク配分にある
総額で割高になりうるのに成果報酬が選ばれるのは、支出の時期とリスクの持ち手が変わるからである。固定報酬は、成果が出るかどうかが分からない段階から支出が始まる。成果報酬は、成果が確認できてから支出が始まる。
とくに、過去に外注で成果が出なかった経験がある事業では、この違いが決定的になる。社内の稟議でも「成果が出なければ費用は発生しない」という説明は通りやすい。稟議を通す材料の揃え方は、「社内で検討します」のあとに起きていることで扱っている。
つまり成果報酬は、総額を安くする仕組みではなく、立ち上がりのリスクを受託側に移す仕組みである。安さを理由に選ぶと、成功したときに判断を後悔することになる。
成果報酬に向かない会社には、3つの共通条件がある
成果報酬は、どの事業にも当てはまる形ではない。向かないのは成果報酬という仕組みではなく、成果を記録していない状態である。
受注単価が低く、件数で積む商材
1件あたりの粗利が小さい商材では、成果報酬の料率をかけても受託側の報酬が運用工数を回収できない。結果として、提案を受けられない、あるいは最低報酬額を設定されることになる。
この場合は、成果報酬より手数料型や固定報酬のほうが噛み合う。料金形態そのものの選び方は、リスティング広告の運用代行は成果報酬型を選ぶべきかで定額・手数料・成果報酬の3種を比較している。
検討期間が長く、報酬の帰属が判定できない商材
問い合わせから受注までの期間が長い商材では、受注が「どの施策の成果か」を判定しにくい。契約期間が終わったあとに受注が決まることもある。この帰属の問題を契約で決めていないと、契約終了後に請求の可否で対立する。
対処は、成果の帰属を期間で区切って明記することである。期間を決める以上、どちらかが損をする場面は必ず出る。それでも、決めていない状態より摩擦は小さい。
自社に成果を記録する仕組みがない会社
粗利連動型は、案件別の直接原価が集計できることを前提にする。売上連動型も、受注の判定時点を記録できることを前提にする。記録が無い状態では、どちらも算定できない。
この条件は、成果報酬を断る理由ではなく、着手前に整えるべき順番を示している。記録の仕組みがないまま成果報酬を結ぶと、報酬の根拠が受託側の申告だけになり、依頼側が検証できなくなる。
| 観点 | 成果報酬が噛み合う | 成果報酬が噛み合わない |
|---|---|---|
| 受注単価 | 1件の粗利が大きく、件数は少ない | 1件の粗利が小さく、件数で積む |
| 検討期間 | 施策と受注の対応が追える | 受注が契約期間の外に出る |
| 記録 | 案件別の売上・原価が集計できる | 受注の記録が担当者の頭の中にある |
| 目的 | 立ち上がりのリスクを移したい | 総額を最も安く抑えたい |
「完全成果報酬」という表記は、景品表示法の観点で確認する
成果報酬の提案資料には「完全成果報酬」「初期費用0円」といった表記が並ぶ。“完全”と書けるかどうかは、実費が別に発生しないかどうかで決まる。
媒体費や実費が別なら、「完全」は有利誤認に当たりうる
景品表示法は、価格その他の取引条件について、実際よりも著しく有利であると誤認させる表示を禁じている(第5条第2号・有利誤認表示)。品質や内容を実際より優れていると誤認させる表示は、同条第1号の優良誤認表示として別に規制される。
広告運用を成果報酬で請け負う場合、広告媒体費は依頼側が負担するのが一般的である。媒体費が別に発生するのに「完全成果報酬」と書けば、取引条件を実際より有利に見せる表示になりうる。確認すべきは、報酬以外に発生する支出がすべて書かれているかである。
依頼側の立場でも、ここは見積書の読み方になる。報酬の料率だけを比べるのではなく、媒体費・制作費・計測ツールの費用・最低保証の有無を同じ表に並べて突き合わせる。
2024年10月施行の改正で、不当表示には罰金が加わった
景品表示法は令和5年5月17日に改正法が公布され、一部の規定を除き2024年10月1日から施行されている。優良誤認表示・有利誤認表示に対する罰則として100万円以下の罰金が新設された(第48条)。
あわせて、違反行為から遡り10年以内に課徴金納付命令を受けた事業者については、課徴金の額を1.5倍に加算する規定が設けられた(第8条第5項・第6項)。是正措置計画の認定を受けた場合に措置命令・課徴金納付命令を適用しない制度も新設されている(第26条〜第33条)。
受託側にとっては、自社の訴求表現を見直す理由になる。依頼側にとっては、強い表現を使う提案元が表示の根拠を説明できるかを確かめる材料になる。
契約前に決める5項目|書けない定義は、運用でも判定できない
ここまでの論点は、契約書の条項に落ちる。契約書に書けない定義は、運用でも判定できない。
成果の定義と計測方法は、同じ粒度で決める
- 成果の定義:報酬が発生する地点を一文で書く。「問い合わせ」ではなく、どの条件を満たした問い合わせか、あるいは受注か、粗利か。
- 計測方法:その地点を、どの数字で判定するかを決める。判定に使うツール、集計の責任者、締めのタイミングまで含める。
この2つは、必ず対にして決める。定義だけを細かく書いても、判定する数字が取れなければ運用できない。逆に、取れる数字に合わせて定義を決めると、成果地点が受注から遠いところへ流される。
成果地点を受注の近くに置く理由は、成果地点は、“測れる場所”ではなく“受注に近い場所”に置くで扱っている。
お金と期間の条件は、支出の全体像で決める
- 実費の扱い:広告媒体費、制作費、計測ツールの費用を、誰がいつ負担するかを書く。報酬に含むのか別請求なのかを明記する。
- 契約期間:最低契約期間と、更新の条件を決める。成果の発生まで時間がかかる商材では、期間が短すぎると双方が損をする。
- 契約終了後の扱い:契約期間が終わったあとに決まった受注を、報酬の対象にするかどうかを決める。対象にするなら、何カ月分を対象とするかまで書く。
5項目目は、提案段階では飛ばされやすい。それでも、検討期間が長い商材では最も揉める条項になる。先に決めておくほど、交渉の材料は少なくて済む。
なお、成果報酬の一般的な仕組みとデメリットについては、成果報酬型Webマーケティングの仕組みとデメリットで“成果”の定義を軸に整理している。本記事は、そこから料金形態と契約条件の選択に進む位置にある。
依頼前の判定は、3つのステップで進める
決める順番を間違えると、成果地点が料金形態に合わせて歪む。料金形態を先に選ぶと、成果地点が料率に都合のよい場所へ移される。先に成果地点、次に計測方法、最後に報酬条件という順で進める。
第1に、報酬が発生する地点を、受注に近い場所で決める。第2に、その地点をどの数字で判定するかを決める。第3に、料率・実費・期間を同じ表に並べて突き合わせる。この順で各社の提案を整理すると、料率の数字では見えなかった差が残る。
問い合わせが受注につながらない原因を先に切り分けたい場合は、問い合わせが受注につながらない3つの原因を先に読むほうが早い。成果地点を決める前に、どこで止まっているかを知る必要がある。
当社の成果報酬は、粗利連動で設計している
最後に、スリーハンドレッドの条件を開示する。粗利連動を選んでいるのは、受注の質がそのまま報酬に跳ね返る形にしたいからである。
報酬は粗利に連動し、媒体費は含まない
- 報酬の算定:粗利の20%。粗利は、受注売上から直接原価を差し引いた額とする。
- 最低保証:なし。成果が発生しない月に固定の費用はかからない。
- 広告媒体費:依頼側の負担とする。当社の報酬に媒体費は含まない。
- 最低契約期間:6カ月。成果の発生まで時間がかかるため、短すぎる期間では設計が機能しない。
媒体費を依頼側の負担としているため、当社は自社の提供を「完全成果報酬」とは表記しない。前章の有利誤認の論点がそのまま当てはまるからである。
中途解約と契約終了後の扱いは、個別に取り決める
中途解約の条件と、契約終了後に決まった受注の扱いは、商材の検討期間によって妥当な線が変わる。当社では一律の条件を設けず、契約前に個別に取り決めている。この2点を決めないまま進めることはしない。
自社に粗利連動が向くかどうかは、案件別の直接原価が集計できているかで概ね判断がつく。判断がつかない段階でも、現状の受注の記録を見ながら整理できる。無料診断では、成果地点をどこに置けるかと、記録の整え方から確認している。サービスの全体像はサービス紹介にまとめている。
まとめ|料率の比較ではなく、成果地点の設計から始める
成果報酬型は、CV課金型・売上連動型・粗利連動型の3つに分かれる。違いは料率ではなく、報酬が受注からどれだけ離れた場所で発生するかにある。総額では成功したときに割高になり、それでも選ばれるのは立ち上がりのリスクを移せるからである。
成果報酬を選ぶ判断は、料率の比較ではなく成果地点の設計から始まる。成果の定義・計測方法・実費の扱い・契約期間・契約終了後の扱いの5項目を先に決めれば、どの料金形態が噛み合うかは自然に絞られる。
よくある質問
Q. 成果報酬型は、固定報酬より安く済みますか
成果が小さいうちは安く、成果が大きくなると割高になります。固定報酬と並ぶ水準は料率と受注規模で変わるため、現在の受注水準と目標水準の両方で報酬額を試算しておくことをおすすめします。安さを理由に選ぶ形態ではありません。
Q. 「完全成果報酬」と書かれた提案は、信用してよいですか
報酬以外に発生する支出がすべて明記されているかを確認してください。広告媒体費や計測ツールの費用が別に発生するのに「完全」と表示していれば、景品表示法の有利誤認表示(第5条第2号)に当たりうる表記です。表記の是非ではなく、支出の全体像が開示されているかで判断してください。
Q. 粗利を開示しないと、成果報酬は依頼できませんか
粗利連動型では、案件別の直接原価の開示が前提になります。開示が難しい場合は、売上連動型やCV課金型のほうが現実的です。ただしその場合、報酬の発生地点が受注から遠くなるため、成果として数える条件を絞り込む作業が必要になります。
Q. 契約期間が終わったあとに決まった受注は、報酬の対象になりますか
契約で決めていなければ、終了後に対立します。検討期間が長い商材では、契約終了後の何カ月分までを対象にするかを、契約前に文章で決めておいてください。当社では、この条項を個別に取り決めています。
出典:法務省「民法(債権関係)の改正」/消費者庁「景品表示法」「表示規制の概要」「改正景品表示法の概要」/民法第648条の2