問い合わせフォームの項目を減らしたのに、商談が増えない。あるいは、件数は増えたのに、営業の手応えは前より薄い。BtoBで自社サイトを運用していると、この二つはよく同時に起きる。

原因は、フォームを「件数を取るための関門」として設計しているところにある。問い合わせフォームは、件数を集める装置ではなく、商談の準備を始める装置である。この見方を変えないかぎり、項目を減らしても増やしても、受注に近い相談は増えない。

スリーハンドレッドは、受注から逆算して導線を設計することを支援している。この記事では、BtoBの問い合わせフォームを「商談の準備」として組み直すための設計を、項目の区分・自由記述の問い・送信後の画面と自動返信・法令要件という四つの観点で整理する。

この記事の要点

  • フォームの項目数には正解がない。決まるのは成果地点が先であり、項目はその後に決まる。
  • 聞く項目は「判断に要る/後で足りる/要らない」に分ける。初回返信の内容が変わる項目だけを、フォームに残す。
  • 送信後の画面と自動返信までが設計の範囲である。あわせて、個人情報保護法と特定電子メール法の要件を先に満たす。

問い合わせフォームは、件数を集める装置ではなく、商談の準備を始める装置である

同じフォームを、サイトを作る側と商談を受ける側が、別の目的で見ている。サイト側は件数を増やそうとして項目を削り、商談側は判断材料が足りず初回返信で聞き直す。この食い違いが、フォームの設計を止めている。

問い合わせフォームで起きている断絶 件数を優先する設計と、商談を進める材料が、同じフォームの上でぶつかる サイト側|件数を優先する 項目は少ないほど良い という前提で削る 聞くのは社名・氏名・ メールと本文だけ 送信後は受付の一言で やりとりが途切れる 商談側|判断の材料が要る 対象の事業と規模が 分からず返信できない いつまでに何を決める のかが書かれていない 社内の誰が決めるのか が最後まで見えない 判断材料の断絶 初回返信が質問返しになる 受注に近い相談が後回しになる
図1|件数を優先する設計と、商談に要る材料のあいだで起きる「判断材料の断絶」

フォームを「入口」と見ると、項目はすべて邪魔物になる

入口として見るかぎり、項目は通行の妨げでしかない。だから社名・氏名・メールアドレス・問い合わせ内容まで削り、それ以上は聞かない。この判断は、件数という一つの指標だけを見ているあいだは正しく見える。

しかし削られたのは、通行の妨げだけではない。誰からの、どういう相談なのかを読み取る材料も、同時に消えている。残るのは、名前と一行の文章だけである。

フォームを「商談の最初の一手」と見ると、項目は材料になる

商談の最初の一手として見ると、評価の基準が変わる。問われるのは項目の多さではなく、送信された内容だけで初回返信が書けるかどうかである。

初回返信が書けるとは、相手の事業と状況に触れた一通を、聞き直しなしで返せる状態を指す。この基準で見ると、必要な項目と不要な項目は、社内で議論するより先に見分けがつく。

同じ件数でも、初回返信の中身で商談化は変わると考えられる

初回返信が「詳しくお聞かせください」で始まる場合、相手は同じ説明をもう一度書くことになる。比較検討の最中であれば、その手間は他社との差として受け取られる。

フォームで取れていない材料は、必ず初回返信の質問として現れ、相手の手間に転嫁される。件数が同じでも、ここで商談に進む相談の数は変わると考えられる。なお、この影響の大きさを示す公開データは本記事では確認できていないため、断定はしない。

項目を減らすと件数は増えるが、見極めの材料は減る

項目数と件数の関係は、よく語られる。一方で、項目数と「相談の質」の関係は、ほとんど語られない。件数と見極めの材料は、同じ方向には動かない。

「少ないほど良い」は、成果地点を決めていない場合の逃げ道になる

項目を減らす判断は、成果地点が決まっていれば検証できる。決まっていなければ、何を基準に減らしたのかを誰も説明できない。結果として「少ないほど良い」という一般論が、判断の代わりに置かれる。

成果地点の決め方は、成果報酬の“成果地点”の決め方と、成果地点は、“測れる場所”ではなく“受注に近い場所”に置くで扱っている。フォームの項目は、この決定のあとに決まる。

社名・氏名・メール・本文だけのフォームで起きること

最小構成のフォームで届く相談は、多くが一行である。「料金を知りたい」「相談したい」とだけ書かれている。この一行から、対象の事業・検討の時期・社内の立場を読み取ることはできない。

材料のない相談は、確度の判断ができないため、結局すべて同じ扱いになる。受注に近い相談も、情報収集だけの相談も、同じ待ち行列に並ぶ。先に返信されるのは、受注に近い相談ではなく、たまたま先に届いた相談である。

減らす判断と増やす判断は、どちらも同じ基準で下せる

基準は一つで、初回返信の内容が変わるかどうかである。変わるなら残し、変わらないなら落とす。この基準があれば、項目を減らす議論と増やす議論を、同じ土俵で扱える。

観点件数を基準にした場合初回返信を基準にした場合
項目を足す判断件数が落ちるため、原則として足さない初回返信の内容が変わるなら足す
項目を落とす判断迷ったら落とす初回返信の内容が変わらないなら落とす
自由記述の扱い「お問い合わせ内容」の一欄で足りる状況が書ける問いに置き換える
成否の見方問い合わせ件数で見る聞き直しの回数と商談化で見る

設計1|聞く項目を「判断に要る/後で足りる/要らない」に分ける

フォームの議論が長引くのは、全部の項目を一つの列に並べて、要る・要らないを多数決で決めているからである。項目は三つに分けると、議論ではなく手順で決まる。

判断に要る項目は、初回返信の内容が変わるものだけである

自社の場合、対象の事業領域と、相談の起点がどこにあるかで、返信の内容は変わる。この二つが分からなければ、どの事例を添えるかも、どの担当が返すかも決まらない。だからこれは、判断に要る項目である。

逆に、従業員数の正確な区分や、年商の細かい区分は、初回返信の内容を変えないことが多い。変えないのであれば、入力の負荷を払う理由がない。

後で足りる項目は、商談の中で聞く

予算の上限、決裁の経路、導入希望時期の詳細は、商談の一回目で聞けば足りる。フォームで聞くと、相手は検討が進んでいないことを理由に入力をやめる。

稟議に必要な材料は、フォームで集めるのではなく、サイト側に置いて先に読めるようにしておく。この整理は社内で検討しますのあとに起きていることで扱っている。

要らない項目は、社内の誰も使っていない項目である

多くのフォームには、過去に誰かが追加し、今は誰も見ていない項目が残っている。これは追加した理由を思い出せる人がいないため、落とす判断がつかない。

  • 使途を言える人がいない項目。「念のため」で足された項目は、入力の負荷だけを残す。
  • 相手が答えようのない項目。検討の初期には決まっていない内容を、必須にしている場合がある。
  • 自社の都合だけの項目。社内の管理区分や流入経路の選択は、相手の関心の外にある。

設計2|自由記述は「お問い合わせ内容」ではなく、状況が書ける問いにする

自由記述欄は、フォームの中で最も情報量を取れる場所である。「お問い合わせ内容」という見出しが、その情報量を一行に落としている。

見出しが、書かれる分量と中身を決めている

「お問い合わせ内容」と書かれた欄に、相手は用件だけを書く。見出しが用件を求めているため、それ以上は求められていないと読む。見出しは、入力欄の仕様ではなく、問いである。

問いを変えると、同じ欄に書かれる内容が変わる。「いま困っていること」よりも、「どの段階で止まっているか」のほうが、相手も書きやすい。感情ではなく、事実を聞く形になるためである。

状況を聞く問いは、三つの要素で作る

  1. 対象:何について相談したいのか(サイト、広告、問い合わせ後の商談など)。
  2. 現状:いま、どこまで進めていて、どこで止まっているのか。
  3. 期限:いつまでに、何を決めたいのか。

この三つを、一つの自由記述欄の中に例示として書いておく。欄を三つに分けるより、入力の負荷が軽い。例示は、記入例として薄い文字で置く方法が一般的である。

選択式と自由記述は、役割を分けて併用する

選択式は、返信の振り分けに使う。自由記述は、相手の言葉をそのまま受け取るために使う。選択式だけにすると、相手の文脈が消え、提案の精度が落ちる。

選択式は社内の処理を速くし、自由記述は提案の質を上げる。どちらか一方では足りない。なお、問い合わせの前段で見ておく指標については問い合わせの“手前”に、見る指標がないで扱っている。

設計3|送信後の画面と自動返信までが、フォームの設計範囲である

フォームの設計は、送信ボタンで終わらない。送信直後の数分が、相手が自社を比較する最初の場面になる。

送信後の画面には、次に何が起きるかを書く

受付の一言だけで終わる画面が多い。ここに書くべきなのは、感謝ではなく予定である。誰から、いつまでに、どういう形で連絡が来るのかを、具体的に書く。

あわせて、返信を待つあいだに読める記事や事例を置いておく。検討を止めずに進められるため、商談の一回目で話す内容が変わる。

自動返信は、担当と所要時間を名乗る

自動返信を定型文のままにしている場合、相手に伝わるのは「届いた」という事実だけである。担当者名と、返信までの目安時間を入れると、待つ側の不安が減る。

ここで示した目安は、社内で守れる範囲にする。守れない目安を書くと、最初の約束を破ったところから商談が始まる。

返信までの時間そのものが、比較の軸になっている

複数社に同時に相談している場合、最初に返ってきた会社が基準になる。内容ではなく、速さと具体性が比較の対象になる。

比較の軸は、提案書ではなく初回返信の段階で、すでに決まりはじめている。この構造は相見積もりで負けるのは、価格ではなく“比較の軸”であるで扱っている。

設計4|法令上フォームで満たすべきことを、先に押さえる

項目や文言を工夫する前に、満たしておく要件がある。後から足すと設計のやり直しになるため、法令要件は最初に置く。以下は条文の内容の整理であり、個別の案件についての法的助言ではない。詳細は自社の顧問弁護士に確認することが望ましい。

利用目的は、取得の前に明示する

個人情報保護法第21条は、取得に際しての利用目的の取り扱いを定めている。第1項は「個人情報取扱事業者は、個人情報を取得した場合は、あらかじめその利用目的を公表している場合を除き、速やかに、その利用目的を、本人に通知し、又は公表しなければならない。」と規定する。

さらに第2項は、契約書その他の書面に記載された本人の個人情報を、本人から直接取得する場合について、あらかじめ本人に対し利用目的を明示しなければならないと定めている。この「書面」には電磁的記録が含まれる。Webの入力画面も、この整理の対象として扱われる。

実務上は、フォームの近くに利用目的を書き、プライバシーポリシーへの導線を置く。利用目的を変更した場合は、第3項により、変更後の目的を本人に通知または公表する必要がある。

メール配信の同意は、問い合わせの同意と分ける

特定電子メール法(特定電子メールの送信の適正化等に関する法律、平成14年法律第26号。2002年制定)は、広告宣伝メールについて、第3条第1項で、あらかじめ同意した者に対してのみ送信できるという原則を定めている。この仕組みは平成20年の改正で導入された。

取引関係にある者や、名刺などの書面で自らメールアドレスを通知した者への送信などは例外とされている。インターネットでアドレスを公表している者への送信も例外だが、送信を拒否する旨も公表されている場合は例外にならない。

問い合わせへの同意は、メール配信への同意ではない。フォームでは、配信の同意を別のチェックとして分け、既定で有効にしない形にしておく。

同意の記録には、送信後も保存義務が残る

同意を得て送信する場合、同意を受けた際の状況(時期や方法)を示す記録を保存する義務がある。保存期間は、その記録に係る広告宣伝メールを最後に送信した日から1か月であり、措置命令を受けた場合は1年とされている。

特定商取引法の対象となる場合は、請求・承諾を示す書面または電子データを、広告を行った日から3年間保存する。また、送信するメールには第4条の表示義務があり、送信者の氏名または名称、受信拒否の通知先、住所、苦情・問合せ先などを示す必要がある。

自社のフォームを点検する手順

新しい項目を考える前に、いま何が足りていないかを調べる。足りない項目は、初回返信で聞き直している内容として、すでに社内に記録されている。

自社のフォームを点検する手順 項目を増やす前に、いま初回返信で聞き直している項目を調べる 01 並べ替える 直近の問い合わせを 受注に近い順に並べる 件数ではなく、受注に 近いものから見る 02 書き出す 初回返信で聞き直した 項目をすべて書き出す 聞き直しは、足りない 材料の一覧である 03 入れ替える 聞き直した項目を足す 使わない項目を落とす 増やすのではなく、 入れ替える フォームを「商談の最初の一手」に変える
図2|自社のフォームを点検する手順(並べ替える→書き出す→入れ替える)

STEP1|直近の問い合わせを、受注に近い順に並べる

直近の問い合わせを、受注・商談・情報収集の順に並べ替える。件数の多い順ではなく、受注に近い順である。この並びが、どういう相談を増やしたいのかを具体的にする。

受注に至った相談と、至らなかった相談で、フォームに書かれていた内容を比べる。差が出た項目が、判断に要る項目の候補になる。

STEP2|初回返信で聞き直した項目を、すべて書き出す

営業の送信済みメールから、初回返信で聞いた質問を抜き出す。同じ質問が繰り返し出てくるなら、それはフォームで取れていない材料である。

この作業は、推測を挟まずに済む。社内の誰かの意見ではなく、実際に送った文面が根拠になる。

STEP3|聞き直した項目を足し、使っていない項目を落とす

書き出した質問のうち、初回返信の内容を変えるものだけをフォームに足す。同時に、社内で使途を言える人がいない項目を落とす。項目は増やすのではなく、入れ替える。

自社の問い合わせフォームが、受注に近い相談を取れているかを確かめたい場合は、無料診断で、直近の問い合わせと初回返信をもとに点検できる。

フォームの設計は、件数の問題ではなく導線設計の問題である

項目数に正解はない。決まるのは成果地点が先であり、項目はその後に決まる。聞くのは、初回返信の内容が変わる項目だけで足りる。

そして設計の範囲は、送信ボタンの先まで続く。送信後の画面と自動返信、そして法令要件までを含めて、一つの導線として組む。フォームは、相談を受け付ける窓ではなく、商談の最初の一手である。

よくある質問

Q. 項目は結局いくつが適切なのか

数で決める問題ではない。初回返信の内容が変わる項目を数えた結果が、その会社にとっての適切な数になる。同じ業種でも、成果地点が違えば数は変わる。

Q. 自由記述を必須にすると、件数が落ちるのではないか

落ちる可能性はある。ただし落ちるのは、用件を書けない段階の相談である。件数を維持したい場合は、必須にせず、記入例で書きやすくする方法を先に試すとよい。

Q. フォームを用途別に増やしたほうがよいか

自社は、窓口を無料診断に一本化している。入口を増やすと、相手が選ぶ手間が増え、社内の運用も分かれる。入口は一つにし、その中で判断材料を取る形を基本と考えている。

Q. 利用目的の明示は、プライバシーポリシーへのリンクだけで足りるか

リンクを置くこと自体は一般的な運用である。ただし、明示が求められる場面では、本人が読める形になっているかが問われる。個別の判断は、自社の顧問弁護士に確認することが望ましい。

出典:個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」/総務省「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律のポイント」/一般財団法人日本データ通信協会 迷惑メール相談センター「特定電子メール法の違反となる広告宣伝メール」